「マルコ…、ちょっと分からないことがあって…」
「どこだ?」



そう言えば嬉しそうにおれの横へやって来て本を広げる。

航海術や本のこと、分からないことをもって毎晩おれの部屋にやって来る名前。



「これ、この間買った本かい?」
「うん、エースと島に行った時に」
「そうかい」



名前が2番隊に異動して2人だけでいる時間というのは、名前が質問を持ってやって来るこの時間だけになった。
朝飯は食堂で一緒に食うが、昼・夕はそれぞれ都合が合わないこともあって最近は一緒に食ってない。



「ここってどういうこと…?」
「あぁ、これは………」



前までは名前が体調を崩した時や、おれが任務に行っている時以外、常に一日中一緒にいた。

2番隊に行って、仕事の出来ないエースの手伝いをしてくれ。そうは言ったが本当の目的はそうじゃない。本当の目的は、


おれから離れさせること…。



「マルコ?」
「あぁ、悪い。ぼーっとしてたよい」
「働きすぎじゃない?ちゃんと休んでね」



周りに気配りが出来る良く出来た娘。本当は手放したくない、ずっと傍に置いて置きたい。


名前の手を引いて、その体を抱きしめた。



「どうしたの?」
「今だけ、こうさせろい」



すると、クスクスと名前の笑い声が聞こえた。



「今日はマルコが甘えただね」



ポンポンと俺の背中を叩く名前の手、昔はおれの背にも届いていなかったその手はは、確実に彼女の成長を表している。



「成長したねい…」
「ふふ、マルコは子供に戻っちゃった?」



体を離し、名前の頭をガシガシ撫でてやる。



「もう寝ろ。朝起きられなくなるぞ」
「…うん」



すると、今度は名前がガバッとおれに抱きついてきた。



「今だけ、こうさせろい」
「真似すんじゃねーよい」



そう言いつつも背中をポンポン叩いてやる。ふふっ。と名前が笑ったかと思えば体が離れた。



「じゃあ、また明日」
「おう」
「おやすみなさい」


そう言って部屋を出て行った名前を見送りまた机に向き直れば、名前が忘れていった本が目に入った。

それを開いてパラパラと目を通してみると、今まで読んでいたものよりもかなり内容が難しいことが分かった。



「……」



おれの教えたことも完璧に理解し、航海術も叩き込んである。そこいらの奴らより断然優秀な航海士だ。

今はおれを慕ってくれてるが、いつか名前がこの船を降りたいと思う時が必ず来る。安全に暮らしたいと思うようになるはずだ。
だから、一緒にいない時間に慣れなければならねェんだ…、

おれも、名前も…。



「ハァ…」



やっぱりまだ名前の父親でいたいと思ってしまっている自分がいる…。


[ 63/130 ]

[*prev] [next#]


もくじ



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -