はれてわたしは2番隊の隊長補佐になった。2番隊に行ったからといってたいして仕事内容も変わることなく……
うそ。大幅に変わった。
「だぁー!もういいじゃん、勝ったら全部おれらのもんじゃん」
「だからね、戦利品リストにちゃんと書いておかないと、すごいお宝が混じってるのに気付かずに安い値段で売っちゃったりしちゃうの」
エースはマルコとは全然違って、書き物が苦手で、報告書や戦利品リストを書くときにはいつも大苦戦。
1番隊の時は他の隊長達から報告書を受け取りに行ったり、マルコが纏めたのをオヤジに持ってったり、たまにチェックもしたり…、
でも今では報告書一枚書くのが精一杯のエースのサポートだ。
戦利品リストと報告用紙が置いてあるにも関わらず、テーブルの上にピタリと頬をくっ付け、もーいいじゃねェかー!と足をバタバタさせているエースに苦笑いが零れる。
「お前も容量悪いなー、どんどけ名前に迷惑かけんだ」
「め、迷惑なんて思ってないよ」
サッチが飲み物とデザートを持って来てくれ、コト。とわたしの前に置いてくれた。
それを見たエースががばりと起き上がりそのお皿の中身を覗き込む。
今日はマドレーヌらしく、焼きたてのいい香りが鼻いっぱいに広がった。
しかし、置かれたのはわたしの前だけ。エースがおれのは!?とサッチに問う。
「お前はそれ書いてからなー、早く終わらせたら量増やしてやるぞ」
戦利品リストを指差してそう言ったサッチ。それを聞いてエースはやる気が入ったようで、おれならできる!!とペンを持ち直し戦利品リスト用紙に向き直った。
「単純…」
2分経過…
「あぁー、もう無理」
またまた用紙ごしにテーブルに頭をつけるエース。そして、わたしのマドレーヌを物欲しそうな目で見た。
「…少し食べる?」
「い、いいのか!?」
目をキラキラと輝かせ、がばりと起き上がったエースに微笑む。
「じゃあ、戦利品リストはわたしが書いておくから、報告書の方は頑張ろう」
「おう!!」
俄然やる気が出たらしいエースにマドレーヌを一つお裾分け。エースは一口でパクリと食べてしまい、物足りなそうな表情だがそこはケジメ、後は報告書を書き上げてからだ。ペンを持ち報告書に2番隊と書き込んだエースにふふ。と笑みが零れた。
1時間程、頭を捻りながらも報告書を書き進めたエース。時間はかかったけど今回のは抜けてる部分もないし、ちゃんと書けていると思う。
「あと少しだよ、頑張って!」
「おう!」
エースもやれば出来るんだ。報告書も完成に近づいて来た頃ルイトくんが食堂にやって来た。
「お!ここにいたか!報告書出来てるか?」
「もう終わるよ。後で部屋に持って行くね」
「おー、そっかじゃ…「いや!もう書き終わるからそこで待ってろルイト!」……お、おう……?」
ルイト君の言葉を遮りエースの発した言葉にルイト君は首を傾げながらもわたしの正面の席に座った。
わたしも少し不思議に思うがエースのやる気が増したらしいので良かったと思うことにした。
エースを待ってるあいだ、ルイトくんと談笑する。
「名前、今までこんなに忙しかったんだな…すっげェ大変だ…」
「あはは、慣れだよ」
ガリガリガリガリ…
「マルコ隊長すっげェ厳しいし…」
「それはルイト君に期待してるんだよ」
だったら嬉しいけど…。と微笑むルイト君にわたしも笑顔を返す。マルコは頑張ってる人にしか応えないし、何もしない。だからルイトくんは相当気に入られてるんだとわたしは思う。
少し、羨ましい…。
ガリガリガリガリ…
「出来た!」
どうだ!と報告書を持ち上げたエースから受け取って確認する。
最後がちょっと雑な気もするけど…
不安気に報告書を見るわたしの正面からルイト君も覗き込む。
「あー、これなら大丈夫だ」
「そっか!大丈夫だってエース」
良かったねと言うようにエースを見ればなぜかエースはルイトくんを睨みつけていた…。エース?と肩に触れて少し揺すると、ハッとしたようにエースがこちらを向いた。
「ありがとな名前!」
「どういたしまして」
「お疲れさん」
ニッと笑うエースにわたしも笑い返す。すると、サッチがエースに大量のマドレーヌを持ってやって来た。エースは途端に目を輝かせると、勢いよくパクリパクリと口へ放り込んで行く。
「仕事の後だからうめェな!」
「ふふ、良かったね」
エースからの報告書を受け取ったルイトくんは今度はサッチを追いかけ厨房に向かった。
「サッチ隊長、報告書出来てますか?」
「あ"!!忘れてた!」
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