「お願いします!」
「ダメだ」
「でも名前は…」



身体を直角に曲げ、おれに頭を下げるルイトの肩を掴み上げさせる。



「名前も混乱してるのは今だけだ。すぐに戻る」
「あんな泣きそうな顔してたのにですか?」
「……」



ルイトは力強く真剣な目でおれを見る。
泣きそうな…か…。確かにその顔をさせたのはおれだ。でもそれが名前のためなんだ…。



「おれが2番隊に行きます」
「お前、エースの下につけるのか?名前がどうこうじゃなく、お前も2番隊じゃやっていけねェぞ」
「それは…」



エースとルイトは所謂ライバルみてェなもんだ。お互いが同等の立場で切磋琢磨していくほうがいい。隊長と隊員になれば、部下と上司の関係になる、こいつらにそれはむかねェ…。



「とにかく、変えるつもりはねェ、名前も落ち着いたらすぐにでも仕事をしてもらう。」
「……ッはい」


































コンコンッ



「名前ー?入るぞー」



扉を開けば真っ暗で、とりあえず電気をつけた。明るく照らされた部屋の中、ベッドを見れば布団が盛り上がっていた。おれはベッドの脇のテーブルに料理の乗った盆を置き、声を掛ける。



「飯持ってきたぞ、食え」
「いらない…」



布団の中からモゴモゴと返事が返って来る。



「お前、昼も食わずに会議来てたろ」
「んー…」
「おれの作った飯が食えねェってんなら、もう二度と作ってやんねェぞ」



そう言うとモゾモゾと動きだし、布団から起き上がった名前がベッドの端に座った。



「食べます…」
「ん」



よろしいと言うように頭を撫でてやる。困ったように笑った名前に小皿に乗せた炒飯とスプーンを渡す。



「いただきます」



おれはその正面に椅子を持って来て座り、その様子を眺めた。



「美味いか?」
「うん」
「そっか」



おれの顔も緩むのが分かった。あっと言う間に小皿を空にした名前が珍しくおかわりを要求してきたので、またよそってやる。



「ルイトな、お願いしたけど無理だったって言ってた」
「やっぱり……」



名前は小皿を受け取り自嘲気味に微笑んだ。



「それに、ルイトくんは1番隊にいるべき人だよ」
「そっか」



いつもなら、2人を仲直りさせるようにするのがおれの仕事だが、今回ばかりはマルコの考えが全く読めねェ…。



「明日には島に着くらしいぞ、エースと回るんだろ?」
「うん」
「行き辛いならエースに言っといてやろうか?」
「ううん、大丈夫、約束したから行くよ」



微笑んだ名前の頭をもう一回撫でてやった。


[ 58/130 ]

[*prev] [next#]


もくじ



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -