何も考えずにオヤジの部屋を飛び出していた。


どういうこと…?なんで…
わたし、マルコに何かしたかな…。


いつもなら、わたしの気持ちをすぐに理解してくれて、フォローしてくれるのに、さっきは何も言ってくれなかった…。



「名前ッ!」



手首を掴まれ、足が止まる。振り返るとわたしを追いかけて来てくれたのだろうルイトくんがいた。

来てくれたのがマルコじゃないことに落ち込むなんて、わたし最低…。



「ごめん…」
「なんで、ルイトくんが謝るの…」
「おれが補佐になったから…」
「ルイトくんのせいじゃないよ…マルコが決めたことだし…」
「おれが2番隊に行く!マルコ隊長説得するから!」
「えっ、でも!」
「いいから!」



そのまま走って行ってしまったルイトくんの後ろ姿を呆然と見送った。

ルイトくん…マルコのこと、本当に尊敬してた…。この船に来た時から、“マルコさんの下で頑張りたいです!”ってずっと言ってた…。それにマルコが決めたんだ。ルイトくんのほうが相応しいって…

わたし、最低だよね…。わたしは戦闘員でもなんでもないんだから、どこでだって仕事出来るのに…。2番隊に行けばいい。そうすればルイトくんは1番隊のまま…。でも……


気が付けば自分の部屋の前に来ていた。ボーッと考えながら歩いていたのに、身体は分かってるのかな…。


わたしはそのままベッドに潜りこんだ。
























「なぁサッチー?」
「ん?」



カウンター席に座っておれのシェフ姿を見ていたエースが不思議そうな声を出した。



「さっきさ、名前がなんのために頑張ってきたと思ってんだぁー!みたいなこと言ってたじゃんか?」
「ん、あー、うん」
「それって、結局なんのためだったんだ?」



おれは料理をする手を休めずに答える。
さっきまで名前が異動を嫌がったのに少し落ち込んでいたみたいだったエースも、もう立ち直ったみたいだ。まぁ、こいつなら言ってもいいよな。



「マルコとずっと一緒にいたいから」


「あぁー…、やっぱりか…」
「なんだ、分かってたんじゃねェか」
「うん、なんか…そんな気がした」



へへっと笑って首の裏を掻いたエースはテーブル上に腕を乗せ、その上に顎を乗せた。



「やっぱ、マルコには勝てねェんだよなー…」



そう呟いたエースに苦笑いを溢しながらもおれは少し前のことを思い出しながら話した。











8年前。この頃の名前はまだ10歳で、仕事なんて何も出来なかった。昼間、マルコは忙しいから名前のことはナース達が代わる代わる見てたんだ。おれのデザート食いに食堂にも顔を出してくれてさ、その時に名前が聞いてきた。



「マルコの仕事って大変なのかな…」
「んー、おれには無理だな」
「どうすれば手伝えるんだろう?」



名前は10歳の頃からしっかりしてて、決しておれらの困るようなことは言わないし、我儘も言わなかった。マルコが忙しいのを理解して、寂しいなんて言葉も一回も言わなかった。

でも、やっぱ心の何処かではマルコと一緒にいたいって想いがあったんだろうな、いつからか航海の勉強するようになったんだ。



「名前、何読んでんだ?」
「えっと、偉大なる航路航海術って本」
「お、頑張ってるなー」
「うん!」



どこ行くにも航海術の本持ち歩いてた。

結果、名前はたった1年で航海術の基礎を一人で終わらせちまった。

それからだ、新世界の航海術、実践はマルコが教えるようになって、15歳ん時に1番隊隊長補佐になったんだ。

だから、全部マルコと一緒にいたいがために頑張ってきたことなんだよ。







「なるほど…」
「なのに、マルコの奴は何考えてんだか」



おれの呆れたような口ぶりに何か考えている様子のエース。まぁ、エースとしちゃ名前に2番隊に来て欲しい訳だもんな。気持ちも分からねェこともねぇけど。おれは名前の気持ちを優先させてやりてぇ。


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