“午後から隊長会議始めるから遅れないように”


この連絡が回って来たのはまだ朝飯を食ってた時だった。
ま、もうすぐ島に着くらしいし、その連絡かと思ってたんだが、オヤジの部屋に集まったのはいつもの16人と名前、それから、普段は参加しないただの隊員であるルイトまでいた。

おれを含め全員の頭にクエスチョンマークが浮かんでいた。というか、ルイト本人も何故呼ばれたのか分からないようで、自分が何かしでかしたのか不安そうに考えているみたいだった。

事情を知っているのはオヤジとマルコだけらしく、マルコの咳払いで全員の顔が引き締まる。隣りでうつらうつらしているエースを肘で小突き起こした。



「なんでルイトがいるの?」
「それを今から伝えるんだよい」



黙ってろてきなマルコの視線にハルタも押し黙る。ルイトを見りゃ隊長達に囲まれて緊張してんのか少し顔が強張っていた。



「グラララララ…。ルイト、何緊張してやがる」
「だ、だってよ…。おれ、何かミスしましたか…?」
「いや、お前は良くやってくれてるよい」



マルコを見て不安そうに聞くルイトにマルコは顔を横に振った。それに安心したようにホッと息をついたルイトはじゃあなんで?とまたマルコを見た。すると、マルコはサラッと衝撃的な事を口にした。



「これからルイトには、1番隊の隊長補佐として仕事をしてもらう」


「「「えっ!!?」」」



全員の口が開いたまま固まる。


元々、隊長補佐って役職があるのは1番隊だけ。それが名前だった。マルコの仕事量はおれらに比べてかなり多く、(っつうか、おれらがしない分マルコに回ってるって感じだが)名前が補佐になるって聞いたときも誰も反対しなかった。

今回、ルイトが任命されたってことは、1番隊の隊長補佐が2人になるんだよな?マルコのやつそんなに仕事が大変だったのか…、常に無表情でいやがるから疲れてんのかも分からねェ。


名前を見れば、名前も何も知らされていなかったようで、目を見開いて驚いていた。



「おれが…、1番隊の隊長補佐…ですか…?」
「あぁ」



なんでこんな無表情で言うんだこのパイナップル!!
じゃあとにかく名前とルイトの2人が1番隊の補佐ってことか。



「よかったじゃねぇかルイト」
「…っはい!」



あいつは人一倍マルコに憧れてたしな、今回のこの任命はかなり嬉しいんじゃねぇかと思う。名前もルイトの憧れを知ってるから笑顔でルイトを見つめていた。



「クッ…」



隣にいたエースは悔しそうに歯を食いしばっていたが、この後、マルコが衝撃的な事を口にした。



「それから…、名前には2番隊の隊長補佐になってもらうよい」


「えっ…」

「「「はァッ!!?」」」



これはさっきのよりも衝撃的で、全員の口があんぐりと開いて固まった。いつも冷静なイゾウまでもが手からポロッとパイプを落としてやがる。名前もまた目を見開いて驚き、みるみるうちに顔が強張っていった。



「なんで……」
「お前にはエースの補佐をしてもらいたい」
「でも…」



マルコを見上げる名前、見るからに困ってる。断りたいんだろう、でもそれを分かっているはずのマルコは何も言わずただ名前を見ていた。

つか、ほんとに何事だ!?マルコが自分の傍から名前を離すなんて…!!娘離れか!?


隣を見ればエースがゴクリ。と固唾を呑んで事の成り行きを見守っていた。



「ちょっと……考えたい…」
「名前ッ!」



居た堪れなくなったのか、顔を伏せて部屋から飛び出して行った名前をルイトが追いかけて行った。エースは、出遅れた…。と沈んでいだが、それどころじゃねェだろ。
すでに解散気味にある会議、おれはマルコに近付いた。



「マルコ、どういうつもりだ?」
「どうもこうも、決まったことだよい」



いつも通りに部屋に戻ろうとするマルコに無性に腹が立った。


確かに、エースは仕事が出来ねェし、マルコの下で仕事を覚えた名前が教えりゃ安心だ。だがな…



「名前が今までなんのために頑張って来たのか、お前ェが知らねェ訳ねェだろ!?」
「……。だからだ!あいつが頑張って来たのはおれが一番よく分かってるよい!!だけど、このままだと…離れられなくなる…」

「「「…!!?」」」


「サッチ…、マルコの想いもお前ェ…考えてやれ…」



オヤジが口を開いたところでマルコは何も言わず部屋を出て行った。


マルコの想い?今のおれにはマルコの行動が何も理解できない。お前は名前と離れたいのか?娘としてずっと傍に置いておきたいんじゃねェのかよ?


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