「ん………?」



パサッ…



身体を起こすと、肩に掛けられていた何かが床に落ちる。

あれ…?おれ……
そうだ!名前!


慌てて隣を見るが名前の姿はなく、床に落ちたものを見るとおれの部屋に置いてあったブランケットだった。


「寝ちまった…」


おれの前にあったはずの報告書もなくなっていて、時計を見てみると、名前といた時間から一時間半ほど経っていた。



「おれのバカやろう…」



頭の後ろをガシガシと掻く。
折角名前が教えに来てくれたってのに…。謝りに行ったほうがいいよな…

そう思ったおれは立ち上がり名前の部屋を目指した。














コンコン…


野郎の部屋ならいきなり侵入するが、さすがに名前の部屋でそれはできねェ。とノックするが中から返答はない。



「いねェのか…」



名前の部屋の前で、顎に手を添え考える。

となると…やっぱマルコの部屋か?なんか今はマルコの部屋行きたくねェんだよな…。報告書の事聞かれて怒られそうだ。そうだ、食堂行って晩飯まで待ってるか、そういや腹も減ってるし、サッチに何か作ってもらおう。

とおれは腹が減っていたのもあって足早に食堂を目指した。




























そぉーっと、そぉーっと、名前の肩にブランケットを掛けてやる。

マルコからおれの伝言を聞いて名前が食堂にやって来たのは丁度一時間前、おれ特製のオレンジゼリーを食った後は、話したり本読んだり寛いでたみたいだが、さっき見たらテーブルに伏せて眠っちまってた。


手を伸ばして頬に触れるとくすぐったそうに顔が歪む。



「んんっ…」



名前のその様子を見るだけでおれ含め食堂にいる全員の顔が緩んでる。


「お前、情けねェ顔してるぜ」
「お前こそ」


自然と話す声も小さくなる。名前が起きちまうからな。

今この食堂では、ここが海賊船だってことを忘れるくらい、ほんわかした雰囲気が流れてる。
でも、こういうのも悪くねェな…。

よしっ、名前の寝顔を拝んだとこだし、おれも晩飯の準備すっかなー。



バタンッ!!



「サッチー!腹減ったァ〜、なんか作ってくれ」
「「「しぃーーーっ!!!」」」



こいつの登場にこの場にいた全員が人差し指を口に当てた。だがされた本人は意味が分からないといった顔をしている。


「んぁ?」
「エースてめェ!名前が起きちまうだろッ!」


怒るのもあくまで小さい声、これじゃ怒られた気になれねェだろうが…。それよりも、名前というワードに反応したエースはどこだ?と聞いてくる。


「とにかく静かにしろ、起きちまう」
「おう、分かった」
「あそこ。オレンジゼリーでいいか?」
「サンキュー!」


適当に座ってろ、と言い残し、おれは厨房に戻る。すると迷わず名前の隣へ向かうエース。

てめェ…隣で名前の寝顔を拝もうってか?


「ま、無理だろうな」


だってよ、絶対起きるぜ名前。


おれは厨房からエースの様子をガン見しているが、他のやつらも興味深そうに見ている。

エースは名前を起こさねェよう、ゆっくりゆっくり音を立てずに隣の椅子に座った。

と…



「んっ……」



ゆっくりと顔を上げ、起き上がった名前が目をゴシゴシと擦る。おれたちはブッ!と吹き出し、エースは驚きが詰まった顔で名前を見た。


「なんで…」
「あれ…、エース、起きたんだね」


未だに目を丸くして名前を見ているエース。そりゃそうだぜ、エースは音の一つも立ててなかった。でもな、名前は本当に信用し切ってるやつじゃねェと近付いただけで目を覚ますんだ。何か身の危険でも感じるのかもな…。
マルコだったら抱き上げられても目覚まさねェのによ。

くぁっと欠伸をした名前の前にコーヒー、エースの前にオレンジゼリーを置いてやる。


「ほらよ」
「ありがとうサッチ」
「さ、さんきゅ」


オレンジゼリーを頬張るエースだが、自分の何がいけなかったのか考えてるみてェだ。目が右上向いてる。もうこれは偶然ということにしたのか、いつも通りに戻り名前に言った。


「悪かった、寝ちまって…」
「あぁ、ううん、大丈夫だよ」
「それで…報告書どうなった?」
「マルコが異常なしならもう良いって」



ニコッと笑う名前に頬を染めるエース。名前は起きちまったけど、この二人見るのもなんか和むな…。他の奴らを見れば、そいつらも同様、目尻を下げて二人を見ていた。



「もうすぐね、島に着くんだって」
「ほんとか!何島なんだ?」
「マルコが言うには多分春島だって」
「そっか!本屋一緒に行こうな」
「うん!楽しみだね」


なんだなんだ?一緒に出掛ける約束までしてるのか?いつの間に進展してんだよ!


マルコは知ってんのかな?
チクッてやろ。


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