船室からの扉が開き、甲板へ戻ってきた末っ子。顔を真っ赤にして口に手を当てブツブツと何か言っているみてぇだけど、それを見ておれの顔はニヤリと笑う。



「おっ!エース遅かったなァ!」
「……」
「感謝しろよ〜?おれ名演技だったろ!」



近付いて肩を組んでそう言ってやるが、エースからの反応は全くない。
だが気にせずおれがしてやったことの説明をしてやった。


エースが名前とルイトの方へ向かった後、おれはすぐにマルコとオヤジのところに行ったんだ。

今日のマルコは名前のことはルイトに任せてオヤジと飲んでると思ってたら、やっぱり見てんだな名前のこと。

名前がふらついたの見た瞬間そっちに行っちまって…、マルコのことだ、そのまま自分が名前を部屋まで連れてくなんてこと言いかねない。そう思ったおれは酔ったフリしてナース達を追いかけ回してやったんだよ!

あいつはおれが酔ってるときのストッパーだからな、絶対来ると思ったぜ。
案の定、おれは脳天に奴のかかと落としをくらったんだ。あの野郎…覇気まで使いやがって…!



「てなわけで、おれがあの時酔ったフリしなかったら、今頃マルコが名前を連れてってたってワケだ」



感謝しろ!とエースを見たが、エースはボーッと一点を見つめながら未だにボソボソと小声で何か言ってるだけ。


「おーい、エース?」


ひらひらと目の前で手を振るものの何も反応がなく、不思議に思ったおれは奴の顔を覗き込んだ。その顔は少し赤みを帯びていて、小さく呟いた。


「かわいかった…」



そう呟いたエースにおれの顔も一気に緩まる。

お前ら、一体何があったんだ!?すっげェ気になる!!

だいたいマルコが酔った名前を人に任せるなんてのが例外なんだ!おれもそんなに見たことねェんだぞ!酔ったときの名前!!



「そ、そんなにかわいかったのか?」
「お、おう……」
「だー!なんだよ顔真っ赤にして!」


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