「…ん?」
「やっと起きたか〜!エース隊長ッ!」



目を覚ましたエースの背中をばしん!と一発叩いてやる。おれもちょっと酔ってる、ちょっとだけ。

エースはキョロキョロと周りを見回してガシガシ頭を掻いた。



「あー、寝てた」
「んなこと分かってるっての!ほら飲め飲め!」



背中をバシバシ叩くと、痛えよ、と返されたが笑ってやった。



エースが起きたことで2番隊の奴らが新隊長と乾杯したいとエースの元に続々と集まって来た。一人ひとりに笑顔を見せるエースを見てると、やっぱ、こいつは隊長の器持ってるな。と思う。





「なぁ、名前は?」



暫くして、乾杯に来るやつも落ち着いて来た頃、周りを見回したエースが言った。



「お前はほんっと名前大好きだな」
「っせぇ…」
「ほら、あそこ」



照れてるのか顔を背けたエースがおかしくて頬が緩むが、名前のいる方を指差すと、エースはすぐにその方向を見た。



「今日は酒の許可おりたからな、ルイトがついてる」
「はぁ!?」



過剰に反応したエースはすぐに立ち上がり名前とルイトのいる船首へ向かった。

クククッ…!反応しすぎだろ…!!おれはその後ろ姿を見送りマルコとオヤジの所へ向かった。














「大丈夫か?気持ち悪くねェ?」
「うん、大丈夫」



話してる途中にも何度も何度も確認してくれるルイト君。だけど、今日のわたしは調子が良いみたいで、いつもならあり得ないジョッキ3杯目に突入している。



「ちゃんと食いながらにしろよ?」
「うん、ありがとう」



出された料理も口に入れながら、ルイト君との話に花を咲かせていた。



「名前ッ!!」



突然呼ばれた名前に驚き顔を上げると、エースが焦ったような顔をしてこちらにやって来ていた。



「エース!おめでとう」
「あ…、うん、さんきゅ……」
「えっと…、どうかした?」
「……あ、…えー…と」



呼んでおいて言葉に詰まっているエース、それを不思議に見ていると、隣のルイトくんはクスクスと笑っている。



「名前と2人で飲みてェと思ってよ」
「2人?」
「おいー、おれが先に名前と飲んでんだぞー」


そう反論するルイト君の表情がニヤニヤしているのは気のせい?


「ちょっとルイトどっか行け、隊長命令だッ!」
「いや、おれ1番隊だし」
「あ、そっか」



マルコ隊長の命令しか聞かねェー。と言うルイト君に納得するエース。いや、もう何がしたいんだろう?
なんか二人楽しそうだし…わたし退散したほうがいい?あ、ちょっとトイレ行って来ようかな。

と立ち上がった瞬間、いきなり目眩がし、身体もふらついた。ジョッキ2杯分の影響はバッチリ来ていて身体が倒れそうになる。



「あ……」


ガシッ


「大丈夫かよい」
「マルコ……」



肩を掴まれ態勢を戻される。後ろを振り向けば呆れ顔のマルコがいて途端にハァ。とため息を吐かれた。



「だから言ったろい、飲みすぎるなって」
「今日は調子良かったのに…」



いつもならすぐに症状が出るのに何もなかったから大丈夫だと思ったんだ…。マルコは未だにエースと何か言い合っているルイト君に視線を移して言った。



「ルイト」
「ッ、はい」
「言っただろい、ちゃんと見てろって」
「すみません…」
「ル、ルイト君は悪くないよ…!」



ルイト君は何度も確認してくれたし、いろいろ注意してくれてたよ!勝手に立ち去ろうとしたわたしが悪い。
申し訳なさでルイト君を見れば笑顔で顔を横に振ってくれた。あぁ、暫くはお酒の許しがでても自主規制しよう…。



「名前大丈夫か?部屋戻るのか?」



顔を覗き込んで心配してくれるエースにも申し訳なさが募る、折角のエースのための宴なのに…。



「マルコ隊長ー!!サッチ隊長を止めて下さーい!!」



声の聞こえた方を見れば、お酒のせいで顔を真っ赤にしたサッチがナースさん達を追いかけ回していた。それを見てため息を一つ溢したマルコ。



「ルイト、サッチの野郎止めるの手伝ってくれよい」
「はい」
「エース、お前は名前を部屋まで連れてってやってくれ」
「うぇっ!おれ!?」



マルコの一言にわたしもエースも驚いた。



「い、いいよ…一人で大丈夫」



主役にそんなことしてもらうなんて悪いし…。腕を掴んでいるマルコの手を離し一人で歩き出すがやっぱりふらつく足取り。自分でもフラフラなのが分かる。



その時、二の腕を掴まれ反対側の肩に手が回された。顔を上げてみると、心配顔のエースと目が合った。



「大丈夫か?おれが連れてく」
「ご、ごめんね…」



途中で倒れても心配をかけるだけか、と諦めエースに連れてってもらうことにした。


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