現在のモビーの様子を一言で表すならこれだ。そわそわ。
今日は朝からみんなそんな感じ。今朝、食堂の扉を開くと一斉に集まった視線。え?となるわたしに、みんなはなんだ…。というような顔をして視線を戻した。
なんだろ…?
マルコの姿もサッチの姿もなく、不思議に思いながらも一人分の朝食を確保したわたしは空いている席に着いた。
暫くし、隣へ座ったルイト君に話しかける。
「何かあったの?」
「あれ、名前知らねェのか?」
フォークを咥えながら言ったルイト君と目を合わせる。
え?なんだっけ…?
呆然とわたしを見たルイト君はククッと喉で笑うと、顔を寄せて言った。
「今、オヤジの部屋に隊長達とエースが集まってるんだよ」
「それって…」
「エースが2番隊の隊長になるかも知れねェってこと」
なるほど…。と納得したわたしを見て、微笑んだルイト君はまた食事を再開する。だから、みんなあんなに扉を気にしてるんだ。
この間のエースの様子じゃ何か悩んでるみたいだったけど…、オヤジ達に話したのかな…。どんなことだろうとオヤジなら受け入れてくれる。そう確信してたからエースにはああ言ったんだけど…
ガチャ…
食堂の扉が開き、全員の視線が一斉に集まる。扉が開いた先にいたのはマルコだった。
ゴクリ。全員の息を飲む音が聞こえた気がした。するとマルコは、顔を上げニヤ。と笑った。
「宴の準備をしろい!」
「「「うおぉぉぉぉーー!!!」」」
その時、食堂が壊れるんじゃないかと思うほどの歓声が響いた。
そして現在。
異様な早さで準備がなされ甲板に広がる料理達、全員の手にはお酒の入ったジョッキ、後は主役を待つのみ。
わたしも今日は飲んでいいとマルコからの許しが出た。でも、飲みすぎないこと。折角のエースの隊長就任の宴だし、しっかり楽しみたいなぁ。
船内への扉が開くとオヤジとエースが出てきた。オヤジはポンッとエースの背中を押すといつもの椅子に腰掛けた。
「え?え?なんだこれ?」
宴をするなど全く聞いていなかったらしいエースは船員達に押し進められ甲板の中心に座らされると、手にジョッキを持たされた。
「「「カンパーイ!!」」」
カコンッ!
みんながジョッキ同士をぶつけ合うとマルコが声を出した。
「これで、2番隊の隊長はエースに決まりだよい!」
みんなの視線がエースに集まるが、当のエースは呆然として、事態を飲み込めないよう
「主役のお前が何ボーッとしてるんだよい、ほれ!」
マルコが突っ込んだお肉を骨ごと飲み込むとスイッチが入ったのか、料理をバクバクと頬張り始める。
「グララララ…楽しそうじゃねェか」
「ふふっ…だね」
隣の椅子に座るオヤジを見れば、暖かい目でエースやみんなを見ていて、やっぱりエースに言ったことは間違いじゃなかったなと思えた。
視線を戻すと、喉に詰まったのか苦しそうにしているエースにサッチがジョッキを渡すところが見えた。
「ぷはっ!」
「そんなに慌てなくても食いもんは逃げねェよ。だいたいお前は今日の宴のしゅや…「ぐがぁーー!」
「「「寝やがった!!!」」」
寝てしまったエースにみんな呆れつつも笑いが起こる。
「ぎゃははははっ!」
「おいおい、大丈夫かよ隊長〜!」
「隊長になってもエースはエースだな!」
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