「それから10年、名前はここで暮らしてきたってワケだ」
二人の話が終わって、おれは名前との会話で一つ思い出したことがあった。
「誕生日…」
「ん?」
「誕生日…分からねェって言ってた…」
前におれが質問した時、あの時はマルコが来てそのままになってたけど、そういう訳だったのか…。
「5歳までは祝ってもらってたらしいけどな、3年のうちに忘れちまったみてェだ」
「…そうだったのか」
もしかして、あの時おれが誕生日聞いて、名前が困った表情をしたからマルコが来たのか?理由はそれだけじゃねぇだろうが、そういうことなんだろう。
またサッチが話す。
「前にお前、名前とマルコがずっと一緒にいるって言ってたろ?」
「…おう」
「その海賊船から名前を助け出したのがマルコだ。そっからずっと面倒見てきたのもマルコ、だから名前はマルコを父親のように思ってんだよ」
サッチは視線をマルコへと滑らせる、おれもつられるが、マルコは気にせず酒を口へ運んだ。
「だからか…」
マルコの眉がピクと動いた気がした。
マルコの前で見せる名前の笑顔は、おれの前とでは、どこか…違う。マルコの前だと、本当に安心しきっている。
やっぱり名前の中ではマルコが一番なんだ…。
なんだか。やっと、二人の絆の強さが分かった気がした。
だけど、いつかおれの前でもあの笑顔を見せてほしい。
マルコにしかあんないい笑顔見せねぇなんて寂しいじゃねぇか…。
何年かかってもいい
おれは、名前の一番の笑顔を引き出せるようになりたい。
「初めの頃はマルコにピッタリくっ付いて、おれなんか話もしてくれなかったんだぜ?」
「お前は顔が怖えからよい」
「お前もだろ!」
懐かしそうにサッチがケラケラ笑うのにマルコも笑う。それにおれもフッと表情が緩む。
「まぁ…、エース、過去を知ったからって、お前接し方を変えるなよい」
「名前は今はおれたちの家族だ、昔のことなんていいから、今は笑顔でいさせてやろうぜ」
そんな二人におれも笑みを浮かべた。
「おう!」
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