まさか、エースが名前の過去について聞いて来るとは思っていなかった。


名前の過去を知っているのは、オヤジにおれら隊長達、それと当時からいた船員だけだ。
後から入って来た奴らは、名前の過去なんて聞いて来ない。ただ一人ルイトが聞きに来たことがあるくらいか。

名前がここにいるのは自分達と同じようにオヤジに憧れ、尊敬しているからだと思っている。
ああやって、笑顔で振舞っている名前の闇には誰も気付いていない。

サッチがエースに話しているのを横目におれは当時のことを思い出していた……











ー10年前ー



ドカァァン!



「!?」



蹴破った扉を通り抜けると、10歳にもならない少女が鎖で何重にも縛られて、グッタリとしていた。



「おい…」



おれが声を掛けると、薄く目を開く。本当に、ただ目を開けるだけのことを、とても辛そうに…


おれの姿を確認すると、怯えるように少し後退した。


少女を縛る鎖が、カチャリ。と鳴る。



「大丈夫かよい」
「……」



何も言わない少女。
とにかく鎖を解こうと、鎖に触れれば、体に走る違和感



「ッ…!海楼石…」



なぜ、海楼石で……
この子、能力者か…?



「マールコ!そろそろ出発すんぞー」



おれが蹴破った扉から入って来たのはサッチ。だが、少女を見てすぐに驚きの声を上げた。



「どうしたんだよこの子!?」
「サッチ、この海楼石の鎖、解け」



そう言うと、なんで海楼石!?と言いつつも手で引きちぎった。


カチャンッ…。


少女を縛っていた鎖が音を立てて落ちる。おれはすぐにその子を抱きかかえると船へと戻った。

ミラノへ少女を預け、おれはさっき縛り上げた海賊船の船長の元へ向かう。


やつらは、おれたちに勝てると挑んで来た時とは正反対に、すっかり大人しくなっていた。船長であろう男の頭を引っつかむとヒィッ!と怯えた声を出す。



「あの子…どっから攫って来たんだよい…」
「あ、あの子…?名前のことか…?名前は、か、買ったんだよ!」
「買っただと…?」



声を震わせながら話すこいつに眉間の皺が寄る。



「名前の親から2000万ベリーでな、あいつは悪魔の実の能力者で…グオッ!」



苛立ちのピークに達しそいつの腹を殴れば、泡を吹いて気絶した。



「チッ…!」

「マルコ隊長!応急処置だけですが、終わりました」



ミラノに呼ばれ急いで医務室へ行くと、手当てを受けベッドの上で眠っている名前がいた。



「重度の栄養失調で…外傷も酷いです」



ミラノから容態を聞き、ベッド近くの椅子に腰掛けた。


おれに気付いたのか、名前は薄く目を開くと、ぎこちないながらも、ニッコリ。笑った。



「…ぁ…りが……と…ぅ…」



今にも消えそうな声で礼を言った名前。

その時に決めた。
名前はおれが守ると。


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