夜。
最近日課になっている甲板でエースとのお喋り。今夜も甲板へと扉を開けば、珍しくエースが先にいた。
「エースが先にいるなんて珍しいね」
「あ、おぅ…」
いつも声をかければニィッと素敵な笑顔を見せてくれるのに今のエースは船縁に腕を預けたまま、こちらを見ようとはしなかった。
いつもとは違うエースに不思議に思いつつもわたしも隣へ並んで海へと向かった。
「今日はエース大活躍だったね」
「……あぁ」
「みんなさすがだって、褒めてたよ」
「へへ、そっか」
その時、チラリと横目でエースを見てみたけれど見続けることなんて出来なくて、すぐに視線を海へと戻した。
海はいつだって綺麗なわけではない、天候にもよるけれど、見る人の感情によっても見え方が違うと思う。
今のエースにはどんな風に映っているんだろう…。
こんなに悲しそうな表情のエースを見たのは初めてな気がする。
ここへ来たばかりの頃の目とはまた違う。あの頃はオヤジとは別に、何かに挑んでいるような、そんな表情だった。
家族になってからは笑顔のエースしか見ていないのにな、今日だってドーマの一団を一人で相手して…、結果彼らも傘下に入ることになったし。
これまでも言われていたことだけど、ずっと欠番だった2番隊隊長にエースを推す声がさらに増えた。
たぶん、エース本人は今日初めて聞かされたんだと思う。
もしかして、そのことで悩んでるのかな…。
「なぁ名前」
「ん?」
「名前はさ…、本当の親っているのか?」
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