おいおい…
そんなところで寝ちまって…。


甲板の隅に船縁に背中を凭れさせて眠っているかわいい妹の姿が。


大事な妹だ、風邪ひいちまったら困るからな。


おれはブランケットを取って来て、眠っている名前に近付く。すると、おれより先に名前元へ辿り着いたのはマルコパパ。

名前の前にしゃがみ込むと、いつもの無表情からはありえねェような優しい顔で名前の頭を撫でている。
その後ろ姿に近付いておれは声をかけた。


「ブランケット、持ってきたぜ」


おれの声に振り返ると、マルコはおれの手にあるブランケットと未だ眠っている名前を交互に見た。


「いや、もう部屋に連れてくよい」
「あー、そうだな」


もう陽も落ちて来てるしな。その方がいいかもしれねェ。


おれも納得すると、マルコはすぐに名前抱き上げた。

身体が浮いたってのに名前は、んー…。って、めちゃくちゃ可愛い声を出しただけで全く起きる気配はない。
起きるどころかギュッとマルコのシャツの裾を掴み安心したように微笑んだ。その仕草にまた緩むマルコの顔。ついでにおれの顔も。


相当信頼してんだ、マルコのこと。


血は繋がってねェけど、この二人は親子そのもの。

10年。

この長い年月でこの二人の絆は切っても切れねェもんになってる。っておれは思う。

ふとマルコを見れば、少し眉を寄せていて、その視線を辿れば名前の左腕。

そこにはいつも巻かれていた白い包帯はなくなってるが、赤紫色の痛々しい痕が見えていた。


「包帯、取れたんだってな」
「あぁ、痕は残るみてェだが、本人はそこまで気にしてねェみてェだよい」


その時、後ろから、ホッという気配。それには苦笑いを溢した。


「よかったな」


なんとなく、後ろの気配に向けて言ってみる。きっとマルコも気付いたんだろうな。フッ。と笑いを残しマルコは名前を抱え直すと船内へと入って行った。


後ろを向く。

大方、名前のところへ行こうとしたら、おれたちが先に来ちまったってとこか?

するとすぐに去って行く気配。


「はははっ」


ずっとそこの樽の後ろにいただろ?

バレバレだぜ、エース。


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