キィ…


音がして扉が開くと、ナース室から名前が出てきた。
ナース室の僅かな光に照らされた名前の表情は少し嬉しそうで、ミラノと少し話してからナース室の扉を閉じた。


「あれ、エース?」
「おぅ、大丈夫か?」


廊下の電球は小さな頼りないもので、少し薄暗いという空間の中でも名前の首筋に貼られた大きなガーゼが見え、おれは顔を歪めた。


「これ…」
「あ…」


おれがガーゼに触れようと手をのばすと、サッと名前が手でガーゼを抑えた。
あ、無闇に触れられたら痛ェよな…。


「わりィ」
「これは大げさなだけだから、少し切れただけ」
「ほんと、悪かった…」


ニッコリ微笑む名前に申し訳なさが募る。おれがしっかりあいつを仕留めていれば…。そう思うおれに話題を変えようと思ったのか、名前は声を上げた。


「あ、ほ、包帯取れたの!」


ほら。とのばされた名前の左腕をとって見てみると、確かにいつも巻かれていた包帯はない、でもそこには赤紫色の痕がくっきり残っていた。


「ほんと…すまねェ…」


自然と頭が下がる。おれ、名前に怪我させてばっかだ…。


「あ……、ううん、海賊だもん、怪我の一つくらいあった方がいいよ。だからもう…謝らないで…」


その言葉に顔を上げると、困ったように微笑んでいる名前と目が合った。なんだかずっと見ていられなくてすぐに視線を外した。


「…おぅ」
「…じゃ、後でね」


おれがもう見ないようになのかは分からないけど、名前は火傷を隠すようにしてこの場を去ろうとした。
おれはそのまま別れるのはなんか嫌で。咄嗟に名前の右腕を掴んだ。すると名前は振り返り不思議そうにおれを見上げた。


「あ、あのさ…次の島、今度は一緒に本屋行こぜ」
「…うん!」


ニコッと笑った名前におれも笑い返す。
今度こそ、じゃあね、と去って行った名前の後ろ姿を見ながら、おれはガッツポーズを決めた。


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