「でな、そのルフィが、ずっと海賊王になるって言ってんだ、おれより弱いくせに」
「じゃあそのルフィくんも海賊なんだ」
「いや、今はまだ島で修行中だ」
「そうなの?いつか会えるといいね」
「あぁ!」


酒のせいもあってずっと喋りっぱなしのおれの話に名前は嫌な顔一つせず、ずっと笑顔で聞いてくれる。それが嬉しくてさらに話してしまう。

って!何こんなルフィのことばっかりベラベラ喋ってんだおれ!名前とゆっくり話したくて来たんじゃねェのかよ!

ふと、黙って考えるおれに名前はエース?と顔を覗き込んだ。


「あ、い、いや、名前はさ」
「え、わたし?」


突然の話題変更に不思議そうな顔をする名前。ま、そりゃそうか。


「名前はいつからこの船にいるんだ?」
「んー…10年前くらいからかな…?」
「へー!そんなに前からか!」


驚くおれに名前は困ったような笑みを見せる。こんなチャンス滅多にない、聞けることは沢山聞いておきたい。

好きな食べ物、好きな色、好きな季節や、好きな場所。
おれの質問攻めに名前は笑顔で、一つ一つ考えて真面目に答えてくれた。おれだったらこんなに質問攻めされたら嫌なのに、名前はそんな素振り全く見せない。


「えーと…、あ、誕生日いつだ?」


それを言った瞬間、曇っていく名前の表情。そして小さく呟いた。


「わかんない…」



「え……」
ドカッ!!


不思議に思い、名前の顔を覗きこんだ瞬間、急に頭に走った衝撃。


「いでぇ!!」
「悪い、手が滑ったよい」


頭を抑えながら顔を上げると、腰に手を当てたマルコがおれを見下していた。


「なんで滑っただけなのに覇気使ってんだよ!」


おれの訴えには耳を向けず、名前を見ているマルコ。ジーッといつも通りの何考えてるか分からない表情で、名前。と呼んだ。


「は、はい」


名前を呼ばれた名前はマルコを見た途端、冷や汗をかいて、なぜか逃げる態勢に入っていた。

その腕を即座に掴んだマルコはそれでも表情を変えない。


「なに逃げようとしてんだよい」
「そ、そんなこと…」


なんか…マルコこえぇ…。名前の顔も笑ってるけど、口の端が引きつってて焦ってるって感じだ。


「お前、戦闘が始まったとき、部屋を飛び出そうとしたそうじゃねェか」


それを聞き、明らかに、ゲッ!という顔をした名前。


「な、なんでそれを…」
「ミラノが言ってたよい」
「ひっ!マルコ怖い!」


と名前はマルコに掴まれた腕を振りほどくと、おれの後ろに回りおれのシャツを掴んだ。マルコは両手を腰に当て、おれの後ろへ向けて話し出す。


「いつも戦闘になったら中でいろって言ってるだろい」
「はい、おっしゃる通りです。」


おれの前と後ろで交わされる会話。
名前はおれの背中に額をくっ付けてマルコを見ないようにしている。


「名前…、前出ろよい」
「やだ、マルコ酔ってるし怖い」
「酔ってねェよい」
「酔ってる人はみんなそう言う」
「ハァ…」


名前に口喧嘩で負けたらしいマルコはため息を吐き、後は任せたよい。と言い残しまたオヤジの元へ戻って行ってしまった。


「もう行ったぜ?」


そう言い、後ろを見ると名前はホッと安心したように息をついて、笑っていた。


「ふふっ、マルコに勝った」


してやったり。ニッと笑顔を見せる名前はとてつもなく可愛かった。


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