みんなと朝食を取った後、午前中は部屋で航海術の本を読み耽っていた。
「ふー」
顔をあげ、首に手を当て左右に回す。
あ、これマルコの癖だ。
ふふ。と自分に笑いながら時計を確認すると丁度お昼前。それに少し驚き、読んでいた本を本棚に戻すと、少し慌てて部屋を出た。
ナース室と医務室は船の中では奥の方に位置するため、少し薄暗い廊下を進まなければならない。医務室を使うのは重傷な時や、病の疑いがあるときだけ。普段の擦り傷や、軽い怪我なら船医に診てもらわずに直接ナース室に行って手当てをしてもらうほうが多い。
ナース室。と書かれたプレートが掛けられたその扉をノックすればナースさんの一人が顔を出し、わたしを見るとその綺麗な顔を綻ばせた。
「やっと来たわね、いらっしゃい」
「おじゃまします」
わたしも微笑み返し中へ入る。中にいたナースさんは5人、あと3人は医務室で仕事中だそう。後で交代するんだって。
中央のテーブルにはいつもの紅茶。更にサンドイッチなどの軽めの昼食も置いてあった。
「うわ…」
「サッチ隊長が作ってくれたのよ」
「名前の好きなフルーツサンドもあるわよ」
「ほんとっ?」
フルーツサンドに目を輝かせつつ指された椅子へと座る。わたしの隣にナース長であるミラノさんが座ったところで始まるお茶会。
「名前はどんどん可愛くなっていくわねぇ」
「そ、そんなことないっ」
「あたしなんてもう老けてくだけよ?」
「ミラノさんはまだまだ綺麗だよ」
「もう!この子ったら!」
ミラノさんは本当に美人で優しい大好きなお姉さん、わたしがこの船に来た10年前からなんら変わりない美しさだ。
「そうだ名前、服足りてる?良かったらあたしのあげるわ」
「前にもたくさん貰ったよ!?」
「いいから、これなんてきっと名前に似合うわよ」
他のナースさん達も服をたくさん譲ってくれて、服でいっぱいになっている紙袋をいくつも渡された。
「あ、ありがとう」
「いいのよ、また買い物にも行きましょうね!」
「次の島は何島なの?マルコ隊長何か言ってた?」
「次は秋島だって言ってたよ」
島の名前はまだ分かっていないけど、気候が安定してきたし、もうすぐ着くだろうとも言っていた。
「あら、秋島なの。」
「最近肌寒いと思ってたところよ」
「前の春島は上陸出来なかったし、次は楽しみましょうね」
「うん!」
前の島だった春島は、エースがまだ荒れていた頃で、船を島へつけるのはやめになった。
オヤジ曰く、逃げられたら困るから、だそうだ。
近くに停船し、ログが溜まるとすぐに出発した。
実は…、あの時、わたしを気にしてくれたのかマルコが背中に乗せて島まで連れ出してくれた。
“みんなには、内緒だよい”
そうニヤッと笑って言っていたマルコを思い出して思わず頬が緩んだ。
久しぶりに二人で散策できたし
いい街だったな…
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