「ぐがぁぁー!」
「ごこぉぉぉ!」
くっそ、眠れねェ…。
こいつらうるさすぎる…。
スペードの頃は一応船長だったし、一人部屋だったけど、ここじゃただの新入り、今は四人部屋の二段ベッドの上がおれの寝床。
同室のやつらの寝息もやべぇけど、今日は1日のほとんどを昼寝に費やしちまったからな…。
「あー」
ついに体を起こして頭を掻きむしった。
外行って気分転換して来よう…。
他のやつらを起こさないように、そーっとベッドから降り、部屋を出た。
そこから長めの廊下を進んで外へ行けば途端に聞こえる波の音。
「あれ」
と人の声。
「ん?……あっ!」
声の方を見れば、今日一日気になっていた名前が、海を背にして不思議そうにおれを見ていた。
「何してるの?こんな時間に」
「あー、他のやつらがうるさすぎて眠れねェんだよ」
「そっかぁ」
なんとなく訳を察したように少し微笑むと、名前は海の方を向いて縁に腕を乗せた。おれもその隣に並んだ。
「名前は?こんな時間に何してんだ?」
「海、見てたの。夜の海好きなんだ」
また静かに微笑んだ名前の横顔はすげェ綺麗で、暫く見惚れてしまった。
「よ、よく来るのか?」
「うん、よく来るよ、冬島付近の時とかは来ないけど」
「そりゃ寒いもんな」
「エースって寒さ感じるの?」
「まぁ、ちょっとな」
「ちょっとかぁ、うらやましい」
わたし暑がりの寒がりだから。と名前は苦笑いを溢した。
意外と普通に話してくれるもんだな。と不意に思った。だって、もっと警戒されてるかと思ってた。
「ふあ〜あ」
大きな欠伸をしたかと思うと、目の端に涙を溜め、軽く擦っていた。
「もう寝ろよ」
「うん…、そうしようかな…。おやすみエース」
「おう、おやすみ」
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