ここ最近、島に上陸していないせいで食糧の残りが少なくなって来た。
エースとジンベエのところに行くのに春島上陸を止めにしたのと、スペードの連中も増えたのと、何より大きいのがエースの胃が底なしだったってことだな…。

てことで、今日は4番隊で食糧確保。まぁ、釣りだ。船べりに並んで腰掛けるおれらの後ろを何度も通る末っ子エース。



「なぁ?名前知らね?」
「んー、マルコ隊長のとこじゃねェか?」



何故か会うやつ会うやつ全員に名前の居場所を聞いてやがる。しかも、問われた船員は皆、マルコの所だ。と言う。おれはエースのそんな様子を釣りをしながら後ろ目に見守っていた。



「さっきは謝っただけだったしな…」



エースの呟いた独り言におれの耳が激しく反応する。なるほどな、だからか。名前が朝飯に遅れて来たのは…。今朝の出来事を思い出し一人納得する。エースのやつ、名前のこと気になるんだな。ククッ、おもしろくなりそうだ…。それに、あいつ隠し事とか出来ないタイプだろ絶対。ニヤける頬を引き締め、またエースの方へと意識を戻した。



「どこにいんだよ!」



なんか苛立ってんなぁ。
船縁を軽く蹴ると、ドカッと甲板に寝そべった。
っておい、寝るのかよ。



「ふわぁ…」



帽子を顔に乗せ完全に寝る体勢に入り、数秒後にはイビキをかき始めた。早ェな…おい。
そんな時、船中に響いた大きな声。



「名前ーー!!来てくれ!」
「はーい!」



その直後、エースはガバッと起き上がった。



「なんだ、呼べば良いんじゃねェか…。」


「ぷっ」



こいつ馬鹿か。
取り敢えずおれも声のした反対側の甲板へと行ってみると、名前早くしてくれー!と釣竿を持ち叫ぶおれの部下。
どうやら釣りをしていたおれの部下の竿に超大物がかかったらしい。おれが慌てて船縁から海を見下ろすと、そこにはうちの船の3分の一の大きさはあるだろう魚が竿に引っかかり、逃れようと暴れていた。
この竿はちょっとやそっとじゃ折れねぇからそういう心配はいらねぇが、竿を離しちまったら終わりだ。



「絶対に竿離すんじゃねェぞ!」



この隊員が振り落とされないよう他の隊員達にも掴まえておくように指示した。

さっき隊員が名前を呼んだわけはこいつを引きあげるためだ。いくらおれらでもこいつをこの竿一本で釣り上げるってのはさすがに無理がある。だが名前の能力なら可能だからだ。



「おまたせ、どうしたの?」



すぐにやって来た名前は、不思議そうな顔をおれに向けた。
経緯を説明すると、わかった!と笑顔で承諾してくれ、すぐに海に手を翳し魚を海水ごと甲板へ上げた。



ザッバァァーーン!!



「すげェ…」



後ろの壁から顔だけ出してこちらを覗いているエースがポツリと呟いた。名前には聞こえてなかったみたいだけどおれにはバッチリ聞こえたぜ。こっち来て、名前と話しすりゃいいのに、何を遠慮してんだか。



「うっわァーー!ありがとな名前!」
「こりゃ、暫く魚料理が続くなー!」

「わざわざ呼び出して悪かったな、ありがとよ」
「いいよ、いいよ、良かったね」


名前は、上がった魚を見て自身もその大きさに驚いていた。おれがそんな名前の頭をガシガシ撫でてやると、今度は嬉しそうに目を細める。


「じゃあ、戻るね」
「あぁ、あ、後で食堂来いよ、食料確保も終わったことだし、何かおやつ作るな」
「うん!」



名前は最後にまたニコッと微笑むと、近くの扉から船内へと入って行った。そのあと、慌ててそれを追いかけて行くエースが見え、おれはこっそりその後ろをつけた。


船内の廊下を忙しそうに歩き回る名前、部屋に入って出てくれば書類を持って出て来たり…。



「忙しそうだな…」



エースが呟いた一言。そんなの誰でもわかる。つうか、エースって人の迷惑とか考えるやつだったのかよ…?名前に関してはとことん慎重なんだな。
ククッ。あー、おもしれェ…。話すのは後にしようと思ったらしいエースは甲板に戻りまた昼寝を始めてしまった。


















「おーい、そろそろ起きろ〜!晩飯食いっぱぐれるぞ!」



日が暮れても甲板でぐーすか寝ているエースを起こしに来てやった優しいおれ。少し足で蹴ってやるとエースは、むにゃっ。と起き上がり、未だ閉じそうな目をこすりながらおれの後をついて来た。

食堂では朝同様争奪戦が繰り広げられているが、しっかり自分の分を確保したおれとエースは適当な席に向かい合って座った。


じーっ。


フォークに刺した魚を瞬きもせずじっと見つめているエースにおれは首を傾げた。今朝までの食いっぷりから好き嫌いなんて想像も出来なかったが、もしかして魚嫌いか?



「どうした?」
「いや、この魚って…」
「あぁ、そりゃ、昼間にうちの隊員が釣ったやつだ、すっげェデカいやつ」
「そっか…」



名前があげてたやつだよな…。ポツリと呟くと、パクリ。と勢いよく魚を口へ放り込んだ。そして、へへっと笑う。



「…うめェ!」



名前ってすげェな。ニッて笑いながら言うエースに、だろ?とおれも返す。ちょうどその時、食堂の扉が開いた。
視線をやると、マルコと続いて名前が入って来た。エースを見りゃ口いっぱいに魚を頬張りながらも、視線は名前に釘付け。


マルコ達に視線を戻せば、何言ってんのかわかんねェけど、マルコの言葉に名前が微笑んで頷き、マルコもまた微笑むと名前の頭に手を乗せ晩飯争奪戦の中へと入って行った。
残された名前はいつもの席でマルコを待っているようだ。

エースはその間もボーッ。と食事の手も止めたまま席に座る名前を見ていた。


「エース」
「んあっ!?」
「ぷっ」



おれの呼び掛けに慌てて意識を戻すエースに少し吹いてしまった。こいつ、どんだけ名前が気になるんだよ。



騒がしい食堂の中、飯を食うおれとエース。しかし、食事中もエースの視線はマルコと名前の方へと向いていた。チラチラと何回もあの二人を見て、名前がこちらを向くと慌てて逸らす…って!恋する乙女かお前はァ!



「そんなに、名前が気になるか?」



ニヤつく頬を引き締め、気付かれないようエースに言う。
何でもねぇよ!!とか言うだろうな、それをからかってやるつもりで放った質問だった。



「いや…まぁな…」



なんだ、意外と素直だな…。
驚きつつもエースが話を続けるので耳を傾けた。



「あの2人ってさ。付き合ってんのか?」
「ブーッ!!」



これにはさすがのおれも吹き出しちまった。しかもおれは口に食べ物を含んでいたもんで、エースは汚ねェ。と顔をしかめた。
それよりもよ、お前には一体どういう風に写ってんだ…!!



「んなわけねェだろ?あの2人っつったら、親子ほど歳離れてんだぜ?」
「だってずっと一緒にいるじゃねェか」


ぶすっと言い返すエースがおもしれェが、ここはちゃんと言っとかねェと、マルコがロリコン野郎になっちまう。



「名前は1番隊隊長補佐、マルコといるのは当たり前だろ?」
「そうだけどよ…。なんつーか、あの2人だけ違う気がすんだよな…」



こいつ…観察力っつうか、なんていうか、結構鋭いな…。お前がそういうのに気付くなんて、おれァ驚きだ…。



「…名前にとっちゃ、マルコは父親みたいなもんだしな…、誰よりも信頼しきってる。ま、名前の中でマルコよりデカい存在の奴ァいねェな」
「なんで、マルコなんだ?」



すぐさま返してくるエース。こいつ…興味津々か。教えてやりてェとこだけど、そういうのは名前のプ、プラ、プライズ…?に関わることだ!勝手におれに話すってのはな…。



「そういうのは、自分で聞け」



そう言って、おれは席を立った。エースは不満そうに眉を寄せたけど、あんまりいると意地でも聞き出されそうだ…。



食器を返却口へ持って行き、ふとマルコと名前へ視線を向けると相変わらず穏やかな雰囲気の2人。

名前のあの安心しきった顔はマルコの前じゃねェと見られねェし…。マルコも、あんな優しい顔すんのは名前の前だけだ…。


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