オヤジへの報告を終え、部屋で休んでいると、だんだんと部屋の外が騒がしくなって来た。そろそろ宴が始まるのかと思いおれは部屋を出て甲板へと向かった。


しかし、まだ宴は始まっておらず、甲板では家族が久しぶりの宴だ、と準備をしている所だった。

つい、無意識に名前を探してしまうが、甲板にその姿はなく、近くで樽を運んでいた船員に声を掛けた。



「名前、見てないかよい?」
「あ、名前なら4番隊の手伝いするって言ってましたよ」
「そうか、ありがとよい」



その船員に礼を言い、すぐに食堂へ向かった。


腕の包帯のこともある、本人はちょっとした火傷なんて言ったが、何かあったのは確実だろう、話したくなけりゃ無理に聞くつもりはねェが、容態だけでも聞いておきたい。


食堂へ着くと名前は厨房でバタバタと4番隊の手伝いをしており、おれは適当な椅子に腰掛けそんな様子を微笑ましく眺めた。
すると、名前が茶碗にシチューの様なものを入れて調理場から出て来た。



「ん?」



溢さぬように慎重に運んでいる名前を不思議に思いつつ近くへ行くと、おれが来たのが不思議なのか、シチューを溢さないように注意しつつおれを見上げて静止した。


「マルコ、どうかした?」
「お前こそ、それ何だよい?」
「あぁ、これ、火拳のエースに持ってくの」



笑顔でそう言った名前は続ける。



「もうね、彼も分かってると思うんだ、オヤジの首は取れないってこと…」



少し困ったような表情を浮かべる名前。
おれも他のやつらから聞いていた。おれがいない間も襲撃はなくならず続いていたと…。
おそらく火拳自身気付いている、オヤジの首は取れないことも、オヤジの偉大さも…

おれはフッと笑って名前の頭を撫でてやった。



「そうかい…だったら、冷めない内に持ってってやれよい」



そう言うと途端に笑顔になり、名前は頷いた。
しかし、丁度その時、名前を呼ぶ声がした。



「あっ、はーい!」



慌てて返事をしたものの、どうしようとあたふたしている名前におれは苦笑を漏らしつつその手からシチューを奪い取った。



「呼んでるぞ、行ってこい」
「でも…」
「火拳の所へはおれが行って来てやるよい」



それを聞くと名前は笑顔で礼を言い、呼ばれた方へと向かって行ってしまった。



「ハッ…」



こりゃ、責任重大だねい…。


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