ザッバァァーーン!!
いつもの如く大きな水音が響き、わたしは小さくため息を吐いた。あれからも火拳のエースのオヤジ襲撃は収まる事なく続いていた。
「100回行ったか?」
「行ったな多分」
そんな船員達の声もちらほら。
「まただね…わたし行ってくる」
「毎日毎日、たいした根性だなあいつ」
偶然隣にいたビスタも立派な髭を撫でながら呟いていた。
いつものように、海に落ちた彼を引き上げ、仕事へ戻ろうとすると船中に響く大きな声が聞こえた。
「マルコ隊長が帰って来たぞー!!」
「「ウォォーー!」」
それを聞いたわたしも空を見上げる。青い空よりも青い、綺麗な鳥が翼をはためかせながら、こちらへと向って来ていた。
「マルコ…」
自然と緩む頬。その青い鳥は人集りの中心に着地すると人間のマルコへと姿を変えた。
「帰ったよい」
「マルコ隊長ー!」
「おかえりなさーい!」
船内にいた船員達もマルコの帰りに大騒ぎ、少し離れて見ていたわたしに気付いてくれたマルコは、大騒ぎしている船員達の中から抜け出して、こちらへと来てくれた。
「おかえりなさい」
「あぁ、ただいま」
手が伸びてきて頭を撫でられる。
この感覚も久しぶりだなぁ。
と、その時マルコの視線がわたしの左腕へと下がり、あ。と咄嗟に隠す。
「腕、どうした?」
「えっ…と、ちょっと火傷しちゃって…、でもそれだけだから、気にしないで」
微笑み腕を後ろに隠した。
火傷は、一週間以上たった今でも包帯が取れないでいる。
毎日塗り薬を塗っているんだけど、結構重度らしくて、なかなか新しい皮膚ができずに、まだドロドロとしている。
マルコは後ろへと隠した腕をサッと前へとひっぱり出すと眉を寄せた。
「ちょっとの火傷でこんな包帯ねェ…」
マルコの鋭い視線と目が合い、ヒッ…と身体が固まる。吐け。という無言の圧力だ…。でもここで言ってしまったら火拳のエースが危ない。
「え、え…と…」
「マルコー!オヤジが早く報告に来いってさ!」
た、助かった…!サッチがマルコを呼びに来たらしく、それに、あぁ。と返したマルコは、気を付けろよい。とわたしの頭を一撫でしてオヤジの部屋へと行ってしまった。
「はぁっ…」
一気に肩の力が抜ける。
いつかは吐かされるだろうけど、今じゃなくていい。じゃないと火拳のエースの命が危ないや。
最近は彼のの心にも変化が起こっているのがわかる。もう少し、もう少しなんだけどな…。
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