「なんでですかサッチ隊長!こいつおれらの船を…!」



抑えられた腕を振り払いながら反論している船員を、おれはその肩に手を乗せなだめる。



「落ち着け、オヤジが置いとくっつってんだ、オヤジに逆らう気か?」



そう言うと口を籠らせる。そう、この船でオヤジは絶対だ。



「はっ、離せ!おれにはんなこと関係ねェ!」



反対側のエースはまだ騒いでいる。
こいつにゃオヤジがどうのなんて関係ねェか…。


拘束から逃れ、今度はおれに殴りかかろうとするエース。

そんなもん、おれが受けるかっての。

そう思って、何も構えず、ただ拳の動きを見ていた。


「落ち着いて!」


その時、名前がおれを庇うように飛び出した。



ボゥッ!



「あッ…!!」



その瞬間エースの身体からでた炎が名前の腕に降りかかった。名前は咄嗟に腕を抑え、動きを止めた。



「おい!名前!」



おれが寄ると、名前は大丈夫。と明らかに無理のある笑顔を向けた。
直ぐに腕を確認すると、左手首から腕に沿って10センチ程、皮膚が焼けてドロッとなっていた。



「おい…何名前に手ェ出してんだよ!「サッチ…!」



思わずエースに殴りかかろうとしたところを名前の言葉に止められる。



「名前…」
「わたしは…大丈夫だから」



そう言って名前は無理に微笑んだ。腕を抑えていて、その手もフルフルと震えている、きっと、すげぇ痛いのを我慢してる…。



「わかった、お前らも何もするなよ」



おれの一言でエースを殺す勢いで睨み付けていた船員達も構えたものを下ろした。



「よし、医務室行くぞ」



すぐに名前の手を取り、医務室へと急いだ。

















「いっ……!」


医務室に駆け込み、船医に火傷の治療をしてもらう。おれは腕を組んで壁に凭れていたが痛みに顔を歪めた名前を見て、その右手を握った。



「これで一先ず大丈夫だ」
「ありがとう」



船医はそう言うと後片付けをしながらしかし…。と続けた。



「そんな重度の火傷一体どうした?」
「えっ…と…、その……」
「エースがおれに殴りかかろうとしたのを庇ってくれたんだ…」
「なるほどな…」


おれも、まさかあの場で名前が飛び出してくるとは思っていなかった。
油断してたおれが悪い…。



「結構深い火傷だ。もしかすると、……痕が残る可能性がある」
「……痕…」


明らかに名前が悲しそうな目をしたのがわかった。そりゃあ女の子だもんな…、こんな傷痕が一生残るとなるとかなりショックだろう…。

腕に包帯を巻いた名前と一緒に医務室を出る。


「…名前…、ごめんな…、おれのせいだ…」
「えぇっ!?や、やめてよ、飛び出したのわたしだもん…」
「傷まで負わせちまって…」
「海賊なんだから傷の一つくらいあったほうがいいの!サッチだって顔に大きいのあるじゃん!」


だから大丈夫!!ニコッて笑う名前に強い子だって思った。今だってまだ痛むはずなのに、こんなおれを慰めようとしてくれてる。
こんなにも可愛い妹の希望聞いてやれねぇなんて兄貴じゃねぇよな。


「ハハッ、そうだな!とりあえずの問題はマルコだ…」
「あっ…、怒られるかな…」
「ばか、なんで名前が怒られんだ」


名前の額に軽くチョップをお見舞いしてやった。


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