「よし、じゃあやって見せてくれよい」
「…うん!」


名前の目の前に水の入ったコップが置かれ、キッと眉を寄せ集中している様子の名前が手をかざしてフワッと掴むような仕草をした。

だが、コップの中の水には何も起こらない。

あれ。と名前が呟く。マルコは真剣な表情をして顎に手をやった。たぶん何か考えてる。

今何をしてるかっていうと、名前の能力について調べてるところだ。名前からの自己申告では水を操れるだった。それがどのくらいコントロール出来ているのか、それを把握するために今はコップに水を入れて実験というわけだ。

だが、コップの水に変化はなく。おれも不思議に首を傾げた。名前から聞いた話じゃ、前の海賊船では戦闘時に能力で能力者に海水を浴びせて弱らせたり、小さい船であれば船を沈めるということもやらされていたそうだった。


悪魔の実の能力というのは一度実を口にしたら一生つきまとうものだと聞いてる。つまり能力が消失したりすることはありえないはずだ。なのに水を操る能力者の名前がコップ一杯の水も操れないってどういうことだ?


「あれっ、どうして…」


その後も何度も挑戦するが変化は何も起こらなかった。

名前が呆然とその水を見つめて固まると、マルコが名前に近付いてその小さな腕をとって立ち上がらせた。


「マルコ…?」
「ちょっと思い当たることがある、甲板行くかよい」
「…うん?」


普段は絶対に見せないような笑顔で微笑みかけると、その腕を引いて甲板へ歩いていく。

甲板に出ると、太陽が眩しいいくらいに照らしつけていて風が気持ちよく、まさに青天というべき天気だった。
海も荒れる様子もなく、静かに船底に打ち付けるくらい。


そんな中、マルコは名前を連れて船縁まで行くと、近くにあった木箱を寄せてその上に名前を乗せた。背の低い名前はそれによってで胸から上が船縁から出るくらいの高さになった。


「海の水操ってこの船縁の高さまでもってきてみろよい」
「ん?」


マルコの言葉におれの頭にはクエスチョンマークが浮かんだ。だってさっきコップの水でも操れなかったのに、さっきの何倍もの量がある海の水を操るなんてとても思えなかったからだ。

その考えは名前も同じだったようで不安でいっぱいにした表情をマルコに見せたが、大丈夫だ。と微笑むマルコに頷き海に手を翳した。


フワッ


…ザバッ


名前が手を動かすと、海水が持ち上げられ、丁度名前のいる高さまで蛇のように浮き上がってきた。その状態に驚いたのはおれだけじゃなく名前もだったようで目をまん丸にしておれたちを見つめた。だがマルコはやっぱりな。と予想が確信に変わったという表情で、満足げにその海水を見ていた。


「マルコ、どういうことだよ?」
「ん?あぁ、簡単なことだよい」


説明しろと促すとマルコは気だるげに口を開いた。


「小さい的と大きい的じゃ大きい的のが狙いやすいだろい?」
「あぁ!そういうことか」


コップの中の水は的が小さいから能力で操るのにそれなりの器用さだったり、練習が必要なんだ。だが、逆に海の水だと、標的自体が大きいから、能力で操るのも楽になるわけか。


「でも今の名前には操れる量もそんなに多くはないはずだよい、練習していけば、コップの水も操れるようになるだろうし、操れる海水の量も増えるはずだ」
「名前!すっげー良い能力じゃねえか!」
「あ、え、えへへ…」


頭を撫でると照れくさいのか少し顔を赤らめた名前は、初めてすごいなんて言われた。と嬉しそうに呟いた。
そんな名前の頭にポンと手を乗せると、マルコは少し覗き込んで言った。


「これから練習するか?せっかく身に着けた能力なんだ、便利に使わねぇともったいねえよい」
「うん!!」















「あれから10年か。まさか、海王類まで持ち上げられるほどになるとはなぁ…」


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