「おっ…大きい…」



オヤジの部屋に入った途端、驚きの声を上げた名前はおれの後ろに隠れて足にしがみついた。



「グララララ……、おめェが名前か」
「ひっ…」



オヤジに名前を呼ばれると、おれのズボンを掴む手が強まる。



「名前丈夫だよい…」



手を回して頭を撫で、そのまま軽く背中を押せば大人しくおれの隣に出た小さな身体。



「…え…と……、名前です……」



足下を見ながら小さくお辞儀をした名前にオヤジはは少し目を見開いた。



「ちゃんと礼儀を教わってるじゃねェか…グララ…。名前、これからどうしたい?」



その質問に名前は顔を上げ不思議そうにオヤジを見つめ、首を傾げた。



「お前の出身地がどこか調べることも可能だ、両親の所へ帰りたいってぇならおれたちが送り届けてやるぜ」
「……」



明らかに「両親」という言葉に反応した名前は、目を見開いたかと思うと、視線を下げ、頭を左右に何度も振った。
それにはおれとオヤジも驚く



「親の所に帰りたくねェのかい?」



おれを見上げると、コクン、と首を縦に振る。

なんでだ…。まだまだ親離れする
歳じゃない、それに両親だって心配してるんじゃねェのか…。

おれの驚く顔を見て名前は自嘲気味に微笑むと、またオヤジに向き直った。



「お父さんと…お母さんに……う…売られた…んです…」



その時、名前の乗っていた船の船長の言葉を思い出した。


“名前は、か、買ったんですよ…!”

“名前の親から2000万ベリーで!あいつ能力者で…”



「チッ…!」



親が実の子を売っただと…?思わず拳を握った。

オヤジは冷静に名前と話を続ける。



「だったらおめェ、これから行く宛なんてあるのか?」



また首を左右に振る。この歳じゃ、どこかの島へ下ろすにしても仕事も何も出来ないだろう、また邪魔者のような扱いをされるに決まってる。だったら…



「オヤジ…、名前をここにおいちゃダメかい…?」
「…!?」



驚いておれを見上げた名前の頭を一撫でしておれはオヤジを見た。
安心しろ、お前は必ずおれが守ってやる…。



「ここは海賊船だぜ…、お前名前を危険な目に…「おれが守るよい、必ず…!危険な目になんか合わせねェ!」



オヤジの言葉を遮って強く言うと、鋭い視線とぶつかった。凄い威圧感だ…。でも、ここで引く訳にはいかない、もう決めたことだ、名前は必ずおれが守る…!!
視線がフッと緩むと、オヤジは笑い出した。



「グラララ…だったらおめェ…守ってみろ、マルコ。お前がこんなに必死になるなんざなァ…!」
「オヤジ…」
「名前、お前はおれたちの家族だぜ」
「………!!」



一瞬驚いたように目を見開くと、いいんですか…?と小さく呟いた。
あたりまえだ。とオヤジの手が名前の小せェ頭に被さる、すると何かが外れたようにちいさな瞳に溢れるほどの涙が出てきた。



「泣いていいよい」
「……ひっ…く……う……」



我慢していた涙をいっぱいに溢れされた名前を抱きしめ、何度も何度もその小さな背中を叩いてやった。


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