名前が来てから一週間ほどが経った。容態が回復し、元気になった名前をオヤジに会わせるため医務室から連れ出すと、不安そうにキョロキョロと辺りを見回しながらおれの後ろをついてくる。
この一週間で分かったこと。
名前は名前、8歳の女の子。能力者らしく、水を操れるらしい。まだ見せてもらったことはないが、使いこなせているのかも心配だ。
誘拐でもされたのだろうか、三年間あの海賊船に乗ってたらしいが、その間のことになると身体が震えだし、どうしても話せないみたいだった。
おれが見つけたときは体も傷だらけで髪もボサボサ、服もボロボロの状態だったが、現在はミラノ達に服を繕ってもらい、髪も整えてもらったらしく、本当に可愛らしい女の子になった。
「可愛くしてもらって良かったねい」
「……うん」
名前の頭を撫でながら言うと、少し照れ臭そうに笑った。
またおれが歩き始めると少し後ろをスタスタと着いてくる。
あんな奴らと一緒にされたくはねェが、おれたちも海賊。名前にとっちゃどっちも一緒だ。これから何があるのか、恐怖や不安ばかりのはずなのに、表情こそ不安そうなものの、まだ怖いなんて言葉を一度も発していない名前を強い子だなと思った。
普通の人間なら体験しないような事を経験してきたんだ、この子は…。
名前を見下ろしてみると、不思議そうな顔を返された。
頭に手を乗せ笑い掛けてやれば名前も笑った。
その時廊下の先からあのデカい声がおれの名を呼んだ。
「もしや!そいつはあん時の子か!?」
結構なスピードで近付いてくるサッチに名前は、ひっ。と悲鳴を上げておれの足にしがみついた。
「サッチ、声がでけェんだよい」
「だってよ!!今からオヤジに会わせに行くのか?つーか、えらく可愛くしてもらったんだなー!見違えたぞ!」
ベラベラ喋り続けるサッチにハァ。とため息が漏れるが、当のサッチは名前の顔の高さまでしゃがみ、名前の頭をクシャクシャ撫で良い笑顔(本人的)を向けていた。
しかし、サッチの良い笑顔が余計に怖いのだろう名前はおれの足にしがみついたまま固まってしまっていた。
「いやぁ、まさかおれもこの歳になって妹が出来るとはな!」
「まだこの船に乗るって決まったわけじゃねェだろい」
「え!?無理!おれ、絶対この子妹にする!」
「無理ってなんだよい…」
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