何かスプレーのようなものを顔に吹きかけられ、眠らされたわたしが目覚めたのは数時間前。


目を覚ますとわたしは椅子に座らされていた。

腕の錠は外されていたけれど、足首と首元にはガッチリと付けられていて、逃げられるわけではないのだと理解した。

この部屋を見回したけど、ここはいつもの天竜人の部屋じゃない。
家具の豪華さは変わらないけど、部屋の間取りや置いてある家具の配置が全然違う。

たぶんだけど、ここは船の中なんじゃないかな、この少し揺れる感じがとても懐かしいし、それにアリタナ島で結婚式を挙げると言っていた。だから今はそこに向かってるんじゃないかと思う。

つまり、マリージョアからは出られたってことだ。

あとはみんなが来てくれることを祈るだけ…。


マリージョアからアリタナ島へは何もなければ一晩あれば着くはず…、わたしがどれくらい眠っていたのかはわからないけどもう数時間で着くかもしれない……。


ガチャ…


頭の中でいろいろな考えを巡らせていると扉が開いた。















「二時の方向軍艦を発見!!」
「その周囲にも何隻か見えます!中心は護送船で間違いないかと!!」


見張りの声に全員の眼が鋭くなった。


「いくぞお前ら!!作戦通りに頼むよい!」

「「「おおーーーっ!!」」」


マルコの合図に全員の士気が一気に高まる。おれとサッチは不死鳥と化したマルコの背に飛び乗った。








「おいおいまじかよ…」


爆撃音が響く中。前に乗ってたサッチが焦ったようにそう呟き、マルコは目を見張った。
おれのこめかみ辺りにも汗がつたった。


真っ青な海の上、作戦では軍艦に囲まれている天竜人の護送船におれたちが忍び込んで名前を救出するって作戦だったが、まさかの事態だ。


「なんで護送船が2隻あんだよ…!!」


「1隻はダミーだろい、向こうもおれたちが襲ってくることを少なからず考えてたってことだ…」


マルコも少し焦っているみてえだ、軍艦の陣形はマルコの作戦通り片方に寄り始めてる。だけど、あいつらもさすがに全隻を相手にするのは海の上では厳しいだろう。

あとはおれたちがいかに早く名前を救出してくるかって時間の勝負なのに、さすがにどちらの船に名前が乗っているかなんて、ここからじゃわかるわけがない。


「仕方ねぇか…、エース、お前は手前の船に行けよい、サッチは奥だ。名前を見つけたらすぐに甲板に出てこい、おれが行く。おれは甲板の海兵たちをやるからよい」
「わかった」
「おぅ」


おれはマルコに甲板に降ろしてもらいすぐに群がってきたやつらを蹴散らし船内へ侵入した。


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