激痛により意識が浮上した。


なんだろう、なんで、左の膝がこんなに痛いんだろう。


それに、頬や足から床の冷感が伝わってくる。


ここがどこなのか、どうしてわたしは床で寝ているのか、起き上がって確認したいけれど、身体が重くて上手く動かせない…。

この身体が重い感覚…、一度経験したことがある。力を入れようとすればするほど力が抜ける…。

寝返りをうとうとすれば左膝に激痛が走り思わず声を上げてしまった。


「うっ……」

「起きたかえ?」


目を開けば、誰かと目が合い、瞬間、細められた。


「わーい!わーい!起きたえ!起きたえ!」


途端に騒がしく踊り出したその男に、わたしは目を見開いた。
だって、その男にものすごく、見覚えがあったから…。


「てっ…天竜人……っ!」


よく見ればそいつの顔は格子越しで、わたしは檻の中に閉じ込められているのだと、ここで初めて気が付いた。


「なっ、なにこれ…!出して…!!」
「やっと手に入れたえ!少し傷があるがまぁいい、腕のいい医者に診せたからすぐ治るえ」


ずっと天竜人に見られているのに嫌悪感を抱きながらも、なんとか身体を起こして左膝を見てみると、黄猿に攻撃されたところに包帯が巻かれていた。
両手首と足首には海楼石の錠が嵌められていて、足の方は鎖で檻と繋がれていた。


「足が治ったらすぐに結婚式を挙げるえ!お前をわちきの妻にしてやるえ」

「けっ…こん…?」


その時の天竜人の発した言葉に、わたしは全身の毛が立った気がした。


「第1夫人に迎えることが決まっております」


天竜人の近くにいた側近らしい人がそう言い、わたしは絶望の淵に落とされた気分だった。


「いやだ…」


よく見ればこの檻があるのはこの天竜人の部屋のようで、大きなベッドや豪華な家具、それと奴隷らしき人達の姿も見られる。ということはここは…聖地マリージョア…?

赤い土の壁(レッドライン)の…頂上…。
こんなところじゃ、もし檻から出られたとしても逃げられないじゃん……


ポロリと膝に涙が落ちた。
だけど涙は包帯に染み込んだだけで何も起こらない。それに、涙を流すわたしを見て、天竜人は笑みを深めて喜んだ。


「わちきを殴った女が泣いてるえ!いいざまだえ!早く出して遊びたいえ」
「構いませんが足の傷が酷くなるやもしれません、治りが遅いと結婚式も遅くなるのでは…」
「それは困るえ、ならわちきは別の奴隷で遊ぶえー」


天竜人とその側近は部屋から出て行き、部屋には静かな時間が訪れた。
部屋にいる奴隷の人たちは、私語をする体力もないのか、さっきまでと変わらず無言でいるだけ。

自分もいつかああなるのかもしれないという恐怖がわたしを襲った。


ギュッと目を閉じて、まず浮かんだのはエース。どうしてだろう、マルコじゃなかったことに自分でも驚いた。


「エース………」

会いたい…。


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