海軍が去った後、船底を凍らされたおれたちは未だに船を動かせないでいた。
オヤジを中心に、全員が甲板に集まり、名前と直前まで一緒にいたミラノに事情を聞くことになった。
「あたしたちが隣の部屋に移動してすぐ名前の声が聞こえなくなったので扉から覗いたんです。そしたら意識をなくした名前が海兵に抱えられてて、あたしはすぐに飛び出しました。だけど、首を掴まれて…、それから甲板で投げられたんです。
名前が捕まったのはあたしのせいです。海軍の狙いが名前だとは知らなくて…、お願いします。名前を…助けて下さい」
オヤジに頭を下げたミラノの頭にオヤジは手を乗せた。
「当然だ。名前は、おれの大切な娘だ」
ミラノは涙を流して崩れ、すぐに他のナース達が来て、部屋に連れて行ってしまった。
決してミラノのせいじゃねぇ、青雉だけだと思い込み、船を離れたおれら隊長も浅はかだった。
そのとき、マルコがオヤジの前に出た。
「ずっと、頭には引っかかってたんだよい、名前の手配書だけ、ONLY ALIVE だってのに」
「そこまでして海軍が欲しがる理由が何かあるはずだ」
サッチもそう言うが、おれには皆目見当もつかねぇ。
だってそうだろ、今までなにも目立つようなことしてねぇんだ。
「名前の能力っつっても、ただ水を操れるだけだしな…」
「鍛えりゃそれなりに強えだろうが、それでも三大将だのに勝てるような能力じゃねェよい」
「一体なんだってんだ……」
「天竜人に関係あるんじゃねぇか?」
全員が頭を抱える中、発されたオヤジの言葉に全員の視線はオヤジへ向いた。
「名前は今まで何もしちゃいねぇ、だが、懸賞金を掛けられた原因は、天竜人を殴ったってことだろう。そいつに関係するのかもしれねぇな」
「もしかして、名前に殴られた天竜人が、名前を恨んでて、腹いせに奴隷にしようとか思ってんじゃ…」
「あのアホなやつらな考えそうなことだな」
「んのやろう…!!」
名前を傷付けたら…絶対に許さねぇ…!!
グッと拳を握った。
目付きも悪くなっているのがわかる。
だが、今ここで何も出来ない自分が恨めしい。
マルコみてえに飛行能力がありゃすぐにでも飛んで行くのに…。
「とにかく、場所はマリージョアで間違いなさそうだよい、さっき、海軍の船が向かった方角とも合ってる」
「んで、いつ行くんだよ」
「船底の氷が溶けたらだよい、エース、お前なんとか出来ねぇか?……おい、聞いてんのか」
「……っ…あ?」
話し掛けられていることに全く気付いていなかった。焦る気持ちを抑え、慌てて返すと、マルコに訝しげな視線を向けられた。
「船底の氷どうにかできねぇかよい?」
「あぁ…、いきなり溶かそうとすりゃ船底まで燃やしちまうかもしれねぇ」
「船が動ける程度まで溶けりゃいい、周りの海水温めてくれ」
「わかった」
今すぐにでもマリージョアに向かいたいが、1人で突っ込むことが危険だってのはわかってる。
今、おれがすべきことは船底の氷を溶かすことだ。
少しの間だけ、待っててくれ…名前…。
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