ガバッ!


目が覚め、気が付くと薄暗い部屋のベッドの上だった。


気ィ失ったのか…。

取り敢えず陽の光を浴びようと部屋を出てみると、あまりの眩しさに思わず目を細めた。

少し伸びをしてから、船縁に背中を預け頭を抱え、気を失う前の事を思い出す。


すると、急に頭が冷静になって来た。

そうだ…おれは負けたんだ…
白ひげに…あいつと、渡り合った男に…


その時不意に掛けられた声に反応して顔を上げると、大柄なリーゼントが船縁に飛び乗り腰掛けた。



「おれは4番隊隊長のサッチってんだ、仲間になるんなら仲良くしようぜ?」


ニヤリ。そいつは片眉を上げた。


「うるせェ!」
「ハハッ、なんだよ寝起き悪いな…あ、そうだお前が気ィ失った後の事教えてやろうか?」



睨みを利かせるおれを気にも留めず、奴は続けた。


「お前の仲間達がお前を取り返しに来たんでおれ達で叩き潰した、なぁに死んじゃいねェこの船に乗ってる」


その内容には思わず目を見張る。

しかし、リーゼントはなんともないように笑った。その時、普段、滅多に聞くことのない女の声がした。


「あ、サッチこんなところにいた」
「名前かどうした?」


声のした方を見ると、このような海賊船には似合わないような細い女。

髪は肩にあたるくらいのウェーブがかかった茶色で、服装的に戦闘員には見えなかった。ナースとはまた違う。その辺の島にいるような普通の女。

そいつはおれを見ると止まり、あ。と声を出した。


「あぁ、こいつがあの火拳だよ、さっき目が覚めたんだと」
「そうなんだ」


そいつと一瞬目が合い、おもいっきり睨んでやったが、その女はまったく表情を変えず軽く頭を下げた。

そしてすぐにリーゼントに向き直る。

今までなら睨み付ければ逃げ出すか、怯えるか、何かしらの反応がある奴ばかりだった。ましてや女だ、あんな風になんともない顔をされたのは始めてだった。


「マルコが呼んでたよ、食料のことで話があるんだって」
「おぉそっか、後で行くわ!」
「うん」


リーゼントと話し終えるとあっという間に去っていった女。暫く呆然と姿を見ていた。

あんな細くて弱そうな女がなんで白ひげの海賊船なんかに乗ってるんだ…。あんなやつ、海賊船じゃなんの役にも立たねェし、すぐ殺されるだろ。



「お前、あいつには手ェ出すなよなぁ」
「……。」
「もしあいつに何かしたらうちの1番隊隊長様がお前を殺しに行くぜ?」
「……。」



別におれはあんな弱そうな女に興味はねぇ。頂点を目指してんだ、白ひげの首以外に構ってる時間はないんだ。

その時、自分の手を見てふと思った、そしてすぐに苛立ちが沸いてくる。


「錠も枷も付けずにおれを船に置いていいのかよ」
「枷ェ?いらねェよ、んなもん」


片眉を上げて笑ったそいつにおれはカチンと反応した。

枷も付けなくてもおれなんかに殺られねェってのか!?


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