「……あれ?」
目を開くと、いつも通りの自分の部屋の天井が目に入った。
わたし、オヤジと話してたような…。
今が一体何時頃なのか、自分がどれくらい寝ていたのか、全く把握出来ていないわたしは、取り敢えずベッドから起き上がり部屋を出た。
だけど、船内が妙に静か。
「みんな…?」
物音一つしない。
廊下を進み甲板に出てみると、船首の方に大勢の後ろ姿があった。みんなの視線は同じ方向を向いていて釘付けというような感じだった。
すると…
「ウオォォァァァ!」
ザシュッ!
誰かの叫び声と嫌な音がした。
「え…っ」
マルコやサッチの姿を見つけたので急いでそちらへ向かい、声のした方を見てみると、オヤジの後ろ姿とオヤジに斬りつけられて倒れている男の人がいた。
「起きたのかよい」
「うん、ついさっき…もう島に着いたんだ」
「あぁ、風が手伝ってよい」
視線を戻すと、オヤジに斬りつけられた男が起き上がろうとしている所だった。
「あれが火拳のエース…?」
「あぁ、だがありゃ…あれだな…」
「よい」
そう言い合うサッチとマルコ。そんな2人を不思議に思いながら見ていると、火拳のエースが息を乱しながらも立ち上がった。
「グラララ…まだ立つか…今死ぬには惜しいな小僧」
「!!?」
「まだ暴れたきゃ、この海でおれの名を背負って好きなだけ暴れてみろ…!!」
「!?」
「やっぱりな…」
ニヤリと笑いながらサッチが呟いた。
「おれの息子になれ!!!」
「…!!ッ!フザけんなァ!!!…」
ドサ…ッ
そう叫ぶとと静かに倒れてしまった。
「あーぁ、倒れちまった」
サッチとマルコはすぐに船から飛び降りオヤジの元へ向かう。
「おいマルコ、そいつ運んで手当てしてやれ、グラララ…」
「分かったよい」
マルコは倒れた火拳のエースを運ぶため飛び立ち、闘いを見ていたみんなもぞろぞろと船内へ戻って行く。そんな時、大きな声が響いた。
「エース船長を返せ!!」
「今度はおれ達が相手だァ!」
その声にニヤリ。と笑い振り返ったサッチは来たな!と叫んだ。
「グラララ…お前ら相手してやれ」
「よっし!行くぞお前ら!」
火拳のエースの仲間達の相手をしてからは大忙し。倒れた人達を船に運び海軍に嗅ぎつけられていたというのもありすぐに船を出したのだが、すぐに大時化に遭遇してしまい、マルコがみんなに指示を出してくれたものの、船を安定させるのに時間がかかってしまった。
さらに、怪我人たちの手当てだ。ナースさん達だけでは手が足りなくて、船員達も見よう見まねで気絶している人に薬を塗ったり、包帯を巻いたり…。
ちょっとやり過ぎたか…。なんて呟いている人もいた。
そして今、わたしはジンベエの手当てをしている。
「お疲れ様ジンベエ…」
「悪かったのぅ…小僧一人止められんかった」
「そんなっ、気にしなくていいよ、到着遅くなってごめんね…5日間も戦い通しだったんでしょ?今はしっかり休んで」
そう微笑むと、すまん。そう呟いてジンベエは目を閉じた。
わたしは結構な時間眠っていたようで、島に到着したのはもう夜明け近くだったらしい。現在はまたそれからかなり時間が経ってしまっている。
また暫くナースさん達に混じって忙しく働いていると誰かが勢いよく医務室の扉を開けた。
「名前いるかよい!?」
それは慌てた様子のマルコで、きっと進路のこともあったし、寝ていないんだろうと予測できる彼の目のしたには薄っすらと隈が出来ていた。それが少し心配ながらも傍へ行った。
「どうしたの?」
「忙しいのに悪いな、これから火拳の仲間達の人数確認して、空き部屋も数えてくれるか?あと、サッチにも食料のことで声掛けといてほしいんだがよい…」
申し訳なさそうに言うマルコに、了解の意を示すと微笑んで頭を撫でてくれた。
「マルコも無理しないで休んでね?」
「あぁ、じゃ頼んだよい」
そう言い残すと、すぐに去って行ってしまった。
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