- ナノ -





※ヒョナタ要素あり





「くそ…あの腐れワカメが…」


結局、滝壺には捨てられなかったものの、ドータクンのサイコキネシスで、外出用の鞄ともどもリーグの外に放り出されてしまった。
多分当分中に入れてもらえまい。あのワカメ後で絶対アフロにしてやる。

まあここにいても仕方ないので、私は立ち上がって砂を払い、ボールを一つ投げた。

「わたあめ!」

出てきたのは、チルタリスのわたあめ。
大人しくお上品なレディだ。

私はわたあめの背に跨がる。ふわふわの羽毛が気持ちいい。

「わたちゃん、ソノオまでお願い」
「チル〜」

わたあめは一声鳴くと空へ舞い上がった。



二十分後。

私たちはソノオの花畑のど真ん中に一本だけ生える、甘い香りのする木の下に降り立った。

「わたちゃん、お疲れ様。ボールに戻る?」

わたあめは頷いて、ボールに戻っていく。
それと入れ替わるように、腰のボールのうち二つがカタカタ揺れて、ポケモンたちが飛び出してきた。

「シャ〜ン!」
「ヘラッ!」

私のパートナーで、おしゃれ大好きな甘えん坊のシャンデラ、マカロンと、いつも元気いっぱいなやんちゃっ子、ヘラクロスのスイカだ。
マカロンはボールから出るなり花を摘んでは頭に飾っているし、スイカは甘い香りのする木に一直線だ。
マカロン、いくら特性がもらいびでも花が燃えるから止めろ。
スイカ、今日は蜜はついてないみたいだぞ。

そうたしなめるとスイカはぶすくれてボールに戻っていった。マカロンは戻っては来たものの、ボールには戻らないようだ。うーん、マカロンはシンオウにはいないから見せびらかしたくは無いんだけど、仕方ないか。

のんびりと花畑から村へと歩いていく。

しばらく歩くと、目的のお店が見えてきた。
外観も花の王国ソノオに良く似合った洒落た外観である。

と、その店の前に、見覚えのある姿を確認した。あれは…

「あっ、ヨツバちゃん!こんにちは!」
「こんにちは、ヒョウタさん」

クロガネシティのジムリーダー、ヒョウタさんだった。リーグ関係者である私と、シンオウのジムリーダーは顔見知りなのだ。

「珍しいですね。ヒョウタさんがソノオに来るなんて。」
「やっぱり僕に花は似合わないかなあ、あはは」
「いえ、そういうわけではないですよ」

ただ、お休みを貰ったとしても地下通路に潜って化石探しに明け暮れているヒョウタさんが洒落た喫茶店にいるのが珍しかったのだ。

そうヒョウタさんに伝えると、彼ははにかんだように笑った。
ヒョウタさんのイメージも相まってとても絵になる表情だった。イケメンってずるい。

「実は、さ、下見に来たんだ」
「下見?」
「うん、僕、喫茶店とかおしゃれとか、よくわからないから…でも、地下通路以外の場所に、ナタネちゃんを遊びに連れていきたいなあ、と思って」

ははぁーん。
顔を真っ赤にするヒョウタさんに、私は顔の緩みを抑えることもせずにやにや笑って頷いた。
ヒョウタさんとハクタイジムのナタネさんは、ジムやリーグ関係者公認の仲良しカップルである。
しかし、ナタネさん曰わく、ヒョウタさんとのデートは毎回地下通路で化石掘りらしい。
一緒に話していたスズナさんはカンカンだったが、多分彼女に何か言われたわけでもないらしい。ヒョウタさん自身が成長したんだ。

恋っていいなあ。

顔を真っ赤にして微笑むヒョウタさんを見ると、不思議とリア充爆発しろと呪いをかける気も失せる。


「あっ、そうだ!ヨツバちゃんもここに来たんだろ?良かったら奢るよ。」
「そういうことはナタネさんにしてあげてください。」

こういうのがさらりと出るあたり、この人のモテる理由もわかる。ナギサのニートにも見習って欲しいさわやかさだ。

じゃあせめて恋愛相談に乗ってくれと言われたので、役に立てないかもですよ、と断って一緒に店に入る。喪女が役に立てるはずもないんだが。

店は内装もおしゃれだった。テーブルに載るケーキやパイも美味しそう。見たところ、テイクアウトもできるようだ。兄さんやリーグのみんなやポケモンにも買って帰ろう。


そして私は自分の向かいに座るイケメンのデート成功を心から祈った。


この人なら、きっとうまくいくと思うが。


でもさわやかで甘酸っぱいものも見れたし、出掛けて成功だったかもしれない。

パクリと口に放り込んだ試食のケーキは、甘くて美味しい、恋のような味がした。



私は二次元にしか恋したことはないが。




パステルカラーの恋の花
(最後に一言、

リア充爆ぜろ)






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