あの娘が他の誰かに抱かれる。自分以外の人間に身体を触らせて苦痛と快楽の表情を見せる。考えるだけで燃えるような憎しみが胸を巣くった。それと同時に、信じがたいほどの興奮が熱を上げる。
感度の良い身体はきっと何者の愛撫にも声をもらすのだろう。肌に触れるだけで欲情するように作り上げたのだ。あれは服の上から胸をいじくられるだけで股ぐらをぐちゃぐちゃにしてしまう。いやだというわりに従順で、力のない抵抗は補食者を更によろこばせるに違いない。あの青い瞳が潤んで、だらしのない唇がゆっくりと開いたら、口を吸ってやるといい。短い舌を翻弄して、粘膜を犯してゆけば上顎が弱点であるとすぐにわかるだろう。はしたないとあざ笑ってやれ。あの少女は鼓膜を震わせて、脳で感じて濡れる。いやらしい言葉でいじめ抜き、そこに多少の快楽を加えるだけで、最後は向こうからねだってくる。あれは本当に誘惑の上手な女の子だ。
「はあ……はあ…………」
「えろい顔して。そんなに良いのか」
「う……ふぅ…………」
「今度、ニケの野郎に見せてやろうか」
「やぁ、や、だ……やだ……はっ、んんっ……」
「どうして?」
「ジャックだけに……とくべつな、の……!」
きっと洗脳をほどこしているのだ。全身どこを触れても感じるように開発していく。快感を拾いやすい肉体に仕上げつつ、自分だけのものになるよう内側には魔法をかけていく。言葉で追い込むのだ。自ら枷(かせ)をつけさせて、選んだのは自分であると思いこませる。その錯覚は、嘘は、いつしか誠になる。それで、ようやく心を手にいれるのだ。陥落した少女は支配者の色に染まっている。それを彼女は「愛」だと思うのだろう。
「ティー」
愛しいと瞳がこたえる。それすらも、本当は錯覚なのだ。
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