肌をさまよう指先を見ていた。指の後を唇が辿る。気まぐれな口づけ。熱い息がかかって、時折強く吸われる。その儀式は何度も見ていた。大きな手が服の中に入り込む。長い指にさぐられて、どこもかしこも全てあばかれていた。太い腕が背にまわって、体を固定される。自由を奪う鋼の腕に抱かれて、少女はされるがままだった。喉笛に食らいついた男の熱に浮かされる。歯跡が残らぬくらいの力で噛みつかれ、舌が薄い皮膚をなぶって、細い顎を這い回った。服をたくしあげる手が胸の先を押しつぶす。反応を示せば、妖しげな瞳と視線が交差した。
「あ、ジャック」
震えた声に呼ばれても、彼は黙ったまま行為を続けた。はだけたシャツの中に顔を埋めて、満足するまでこの体を味わう。胸の先に歯をたてられてしまえば、甘く痺れるような快楽が脳髄を揺らした。
「いやだったら逃げてもいい」
逃がす気などないくせに。この男は何を言っているのだろう。その手でこの体を逃げられないようにしたくせに。わかっていて、そんなことを言うのだ。
「あ……あ、ジャック……っ」
肉体の枷は、精神を屈服させるに十分だった。表情の大きく変わらない男の、冷たい色をした眼だけが愉悦で歪んだように見えた。指先が円を描くように腕を撫でている。ぞわりぞわりとせり上がってくるものを解すに少女は幼かった。
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