jack | ナノ





この男にふれられていないところなんかない。見えるところも、見えないところも、すべて。わたしに残されているのは、この肌の内側だけ。彼はあますところなくわたしを味わったし、この口の中にまで指をさしいれて、のぞき込んできたけれど、わたしの大事なところには決して手を伸ばさない。わたしのなかは守られたまま。長い指は薄い皮ふの上を歩くだけ。


呼ぶ声に、こたえる。頬を包まれて、次は髪。そこからはじまることが決まっている。


はだかのわたしを溶かそうと動くだけ、大きな体は火照っていく。熱い息を吐き出しながら、わたしを抱いて低く唸る。その顔が苦しげにするのを見た。彼は、わたしを奏でながら、いつも悩ましげにしている。


震えながら、それでも彼の名を呼んだ。そうすれば喜んでもらえることを知っていた。淡い瞳の色が、やさしく潤む。


ある日、異変が起きた。奥がうずいて、ほかのことを考えられなくなった。その指を求めてやまなく、その先がほしいと鳴いた。どこまで続くかわからない感覚に終わりがこない。そんなはずはないのに。もどかしくてたまらない。


夜の遊びが、だんだんと本気になっていくのはどうして。獣のような眼が必死でその飢えを飲み込むのはどうして。


わたしが泣くと抱き寄せて、あやす。


もっと深く、もっと奥へ。


やさしい男の耳もとで、甘くささやく。


わたしのなかを満たしてほしい。






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