鈍臭い少女は何もないところで転んでみせる。しかも、そのからだは脆くできていて、容易く傷つき、損傷するときた。華奢な腕がビタンと床に打ち付けられたのを目の当たりにして、少なからず同情した。長い髪が乱れて顔にかかっている。
「危なっかしい人だ」
「ありがと、ニケ」
引き起こしてみると、膝の皿が痛々しく皮が剥けて、鮮血がうっすらと滲んでいる。真っ白な肌に血の色はよく映えた。
「痛みますか?」
ティーは緩く首を振った。
「座っていてください」
台所に向かい、持っていたハンカチに水をたっぷり含ませた。椅子に座ってぷらぷらと脚を揺らしているティーのもとに戻って、膝を折る。図らずも跪く体勢になった。血を拭うのを惜しく思いながら、そっと患部を拭う。ハンカチから透明な水が滴り落ちて、ティーの細い脚を伝っていった。ぽたぽたと床に雫が落ちる。剥き出しの脚は頬をすり寄せたくなるほど滑らかだ。可憐な膝を色づかせるうすい傷と濡れた生白い肌。膝裏に指を滑らすと清らかな少女はぴくりと可愛らしい反応を示した。見上げると美しい顔がある。長い睫毛の影を落とす青眼は常よりも暗い色をしていた。この目を見ているといじめてやりたくなるのが不思議だ。じっと目を合わせたまま、患部に爪をたてた。
「……っ」
身じろいだティーにすみませんと謝りながらその脛に唇を寄せる。ティーは小さな声で「くすぐったい」と呟いた。擦り合わされた膝に舌を這わせて、徐々に上へと向かう。脚を割って顔を埋めた。腿の裏は甘美なほど柔らかい。思わず頬ずりをして、その肉を貪った。
「ニケ、やだ……っ」
逃れようと浮いた脚にひどく欲情する。抵抗の言葉は無意味だ。煽られているような気さえする。体を縮こませている少女に喰らいつかんとして身を乗り出した。
「ジャックにされてもこうして逃げるんですか?」
表情をうかがいながら、ねっとりと愛撫の手は緩めない。ティーの頬がさっと薄紅に染まった。
「どんな風に触られているんです?教えてくださいよ」
椅子の背凭れがティーの逃走を阻む。前にはケダモノがいる。さてどうする。彼女は弱々しい抵抗でこちらを悦ばせてくれるだけで、それ以上のことをしない。
「ねえ、教えてください。今までどんな風にされてきました?」
引き下ろして、脚の間に体を滑り込ませた。勢いで服を破く。彼女は暴れない。
「おやおや、こんなところが赤くなっていますよ」
腿の付け根に小さな痣を見つけた。指先でなぞる。彼女は小さな息をもらした。
「ティーは相手がジャックじゃなくても、気持ち良くなれるんですね」
彼女の顔が凍(こお)りゆくのを眺めながら、服を裂いた。こうして白い肌を露わにしていくのはいつだって心が躍る。
「すいませんねえ、私はジャックのように優しくしてあげることは出来ませんから」
こちらを力無く見つめる双眼がゆっくりと深く沈んでいく。何もかも奪い食い尽くした後にはきっと必ずこの上ない幸福感でこのすいた胸の内が満たされるはずだ。
「ほら、もっと楽しませてください」
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