下着を下ろされ、既に熱の集まっている僕のものに、その手が触れた。
「、んっ…」
最後にそこに触れたのはいつだったか。自分で触れたのも、誰かに触れられたのも、思い出すのも面倒なほど前だ。溜まっているであろうそこは、彼の手に敏感に反応してしまっている。
「や、ぁ…と」
「どこがいい?」
問うたくせに、自ら僕のよくなる場所や触り方を探す手。返事なんてできないまま、簡単にそれを見つけられた僕は、もう必死に声を殺すしかなかった。
薄暗い部屋で、枕元の小さなランプの弱い明かりだけが灯る静かなそこで、卑猥な音が生まれる。
「んん、ぃ…あぁ、」
容赦なく扱かれ、その快感に声を押し殺そうとする意識が薄れていく。
「だ、め……も…い、くから」
絶頂はすぐそこ。射精寸前の僕のものから、虎は一旦手を放した。えっと思う間もなく、温かいものに包まれる。
「っ!や、…も、離し…」
「いけよ」
「しゃべ、う…ぁ」
彼の口に押し込まれたのだと気づき、慌てて引きはがそうとする僕の手に反する彼の口。しっかり唇と舌で奉仕された僕のものは呆気なく達してしまった。虎の口の中で。
「ご、ごめ…すぐ拭くもの…」
一滴も零すことなく虎の口の中に吐き出してしまった。どこかにティッシュがあったはずだと体を起こせば、ごくりと嫌な音が鼓膜を揺らした。
「溜まってたのか」
「うそ…え、どうしよう、ごめんなさい」
「なんで謝るんだよ」
「だって、今…」
「濃かった」
何でもない顔をして、この人は…
恥ずかしさに、また顔が熱くなって目頭まで熱くなった。簡単に涙は頬を滑っていき、虎は悪戯な笑みを浮かべてそれを拭ってくれた。
「まだ足りてないだろ」
「っ、え、まっ」
抱き寄せられたと思ったら足の上に跨るよう促され、僕はもう従うしか無かった。
「もう一回抜いとくか」
自分の下着をずらした虎は、自身を取り出して僕のものと一緒に握りこんだ。達したばかりだというのに、既に硬くなっていた僕のものは彼の熱さにさらに硬くなる。
虎の肩に縋るように手を置き、押し寄せる波に耐えた。そんな僕を面白がってか、虎は耳に口を寄せて舐めたり噛んだりを繰り返した。いちいちびくつく僕の肩。それが情けなくて、けれどその口から逃れることもできない。
「ぅ、ふ…んん、ぁ」
「も、イきそうか」
虎も限界が近いのか、扱く手が早くなった。
「と、ら…」
先に達した僕より一息あとに達したらしい虎。二人分の精液がお腹を濡らし、まだぴくりぴくりと揺れるものが触れあっている。
「はぁ、は…」
セックスには淡泊な方、と思ったことはなかったが、今この瞬間、自分は今まで淡泊なセックスしかしたことがないかもしれないと感じた。もちろん、女の子を抱いたことしかないし、男同士でこんなことをするなんて初めてで。しかも、完全に僕は抱かれる立場なわけで…もう既に濃厚すぎる行為をしたというのに、まだ終わりじゃないのだ。
「いいのか、このまま抱いて」
まだ息の整わない僕は、彼の質問に頷くしかできなかった。この場合、“拒否”という選択は皆無に等しいんじゃないだろうか。無理矢理行為を進めることはなくても、どのみちこうする為にここへ来たようなもの。
「なるべく、ゆっくりする」
虎は僕の体をゆっくりと寝かせ、膝裏を掴んで足を開いた。
「っ」
「力抜け」
そんなの無理、言おうとした言葉は声にならなかった。代わりに口から出たのは小さな悲鳴で。
「っひ、ぁ」
まだお腹に残っていた白濁の液を指に絡めた虎が、それを僕の後孔に宛がったから。男同士のセックス。誰にも触れられたことのないそこへ、彼の指が入ってくる。
「ぅ、あ…」
「悪いな、少し…我慢しろ、」
異物感。
内壁を押し広げながら奥へ奥へと進んでくる指。そんなところは汚いと正論を述べることも出来ないまま、じわりじわりと浸食されていく。
それから入念に解され、鈍い痛みは少しずつ和らいでいく。
「はぁ、は…」
「萎えちまったな」
「ご、め…っ!!や、そこ…とら、やめ…」
中を探る指が、確かめるようにぐりぐりとそこに触れた。圧迫感と苦しさに埋もれたそこへ、確かな快感が隠れていて。
「やだ、それ…へん、だから」
「変、じゃない。気持ちいい、んだろ」
「いっ、あ…やぁ」
「蓮、もう、入れるぞ」
充分に慣らされたそこは、無意識に虎の指が抜けていくのを止めようとしていた。
「あんまり煽るな」
「ち、が…」
指とは比べ物にならないものが、慣らされた場所へ宛がわれる。火傷しそうに熱いそれ。そんなもの入らない、でも…
「こっちに、集中しろ」
「ふ、んん」
重なった唇と唇。舌を絡められるほど体の力は抜けて。熱いものがすぐそこにあるという意識はちゃんとしているのに、もうどうしていいかわからない。ただ必死に虎の背中にしがみつくしかなかった。
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