Tiger x Lotus parallel | ナノ

「ん、ぅ……」

セックスには淡白な方で、女を抱いてもこんなふうに胸に吸い付きたいと思ったことはなかった。大きくても小さくても、形がよくても、だ。それがなんだ、自分と同じ…自分より少し薄いだけの胸に…必死にしゃぶりついて。

「ぁ、や……そん、な…」

「気持ち、よくない?」

男がそこで感じるのかなんてしらない。ただ擽ったいだけかもしれない。けれど、舌で転がし、指で弄ったそこはぷっくりと腫れている。

「み、ないで…」

蓮は胸を凝視する俺の目に手を翳し、汗ばんだそれで視界を遮った。

「馬鹿。見せろ」

「ゃ、…でも……」

「俺しか見てないだろ」

だから恥ずかしいんだと言うつもりであっただろう口を塞ぎ、胸から臍、スラックスのベルトへと手を滑らせた。カチャカチャという音に、ぴくりと蓮の肩が揺れて、思わず唇を離してしまった。

「……怖い?」

「んーん、違っ…恥ずかし…い、だけ…」

「…嫌なら、蹴り飛ばしていいから」

そうは言っても、それで止められる自信はない。
蓮の下半身は確実に熱を帯び、スラックスを下げればその下の下着が苦しそうに膨らんでいて。それは俺も同じで。むしろ俺の方がきついと思う。それでも、ちゃんと順番を踏まなければ、蓮を傷つけたくないから。

「っ!ま、…あ、ぅ……」

下着の上から一度撫で上げ、数回揉んでからその硬さを確かめる。
それから下着もずらし、充分に硬度を増したそれを外気にさらした。下着こそ濡れていなかったものの、先端からはじわりと先走りが漏れている。

触れられる…

丁寧に、痛くないように、包み込むように、それを握り込めば、また小さな悲鳴が聞こえた。でも必死にそれを抑えようとして、唇を噛んだり手を噛んだりしているのに気づき、思わず制していた。

「聞かせて」

そんな甘い言葉を囁いて。


「と、ら…ふ、ぅん…ん、」

火傷しそうに熱い息を交えるその下で、俺の手は容赦なく蓮のものを扱く。ぐちゅぐちゅと卑猥な音を響かせるそれに、蓮は俺を直視できないと言うように、ぎゅっと目を閉じてしまっている。

「蓮、れん…目。ちゃんと、見ろ」

覆い被さっている為に、扱く手とは逆の手が体を支えていて、手じゃ触れられない。だから何度もその瞼に唇を当てる。遠慮がちに俺の背中に回された指に、力が込められるのを感じた。

「そう、開けて」

ゆっくり持ち上がる瞼。目の前にある俺の顔を確かめるように眼球は動き、その反動で、快楽からか、羞恥からか、いや両方からか、涙がこぼれた。
それでいい、誰に抱かれているのかちゃんと見ていてもらわなきゃ困る。

「一回、出せ」

既に限界が近いであろう蓮のそこ。扱く手を早めれば、その数回で絶頂を迎えた。とぷりと出てきたものが蓮の腹を汚し、そこはぴくりぴくりと痙攣した。
一度イけば、力も抜けるはず…

ベッド下の引き出しから潤滑液と避妊具を引っ張り出す。息を整える蓮の片足から、辛うじて引っ掛かっていた下着を剥ぎ取り、膝裏を掴んで開脚させる。

「っ、や…」

「嫌?」

「ぁ…」

恥ずかしいのはわかる。男に股開いて悦ぶような奴じゃないってことは、よく知っているから。

「嫌なら、止める」

止めれやしないくせに。
けれど、泣いて嫌がるなら待ってやれる。ただ今のこの発言は、明らかに意味をなさない蓮の譫言を拾って、確かめただけだ。

「……嫌、じゃ…ない、」

「ん、なら、力抜いて」


たっぷりのローションを手に垂らし、開かせた足の間にその指を宛がう。こんなところに自分のものが入るのかと、心配になるほど小さな穴。丹念にマッサージしてから指を押し込めば、やはりかなり狭くて。


「ふ、ぁ……んぅ…、」

「痛く、ねえ?」

蓮にとっては初めての行為ではない。それでも違和感や異物感はあるらしく、かといって気持ち良さそうにもならない。達したことも手伝ってか、蓮のものは完全に萎えてしまっている。

嫌だ、一方的に、犯しているみたいだ。


「蓮、腰…上げて」

「え、ぁ…ん」

ベッドの下にあったクッションを腰の下に置いてやり、指は穴を解したまま、萎えたものを逆の手で掴む。触れば少し硬度を増し、なんとか少し持ち上がってくれた。

それに顔を近づかせ、舌を裏筋へと這わせた。
男のものに口をつけるなんて、考えただけでぞっとする。けれど、今はそんなもの一切ない。むしろ咥え込みたい。

「や、だめ…きたな…い、よ…」

「汚くない」

睾丸を揉みくだしながら、根本まで口に押し込んだ。そのまま舌で先端を、唇で竿を扱いてやれば、そちらに意識が集中したのか後ろの力が少し緩まる。その隙に三本目の指を挿入し、曖昧な存在の性感帯を探した。内壁を押し広げながら指をバラつかせて。

「ん、んぁ、…や…」

いやいやと首を振りながらも、引き剥がそうと俺の頭に置いた手は、いつの間にか髪を鷲掴んで停止している。その手に力が入る場所に、俺の指先が触れた。

「っ!い、あ……んぅ、そ、こ…ダメ……とら、あ」

「ここ?ここが、いいのか?」

ごりごりとそこを擦れば、また涙がこぼれ落ち、つまりそれは肯定かと納得して口から蓮のものを出した。このまま吸い付いて出てきたものを飲み下したいが、今はそれより早く繋がりたい。
後ろだけでも萎えずに反り立つことを確認して、避妊具を装着した。


「蓮、いい?入れるぞ?」

指を抜いてから、後孔にローションを垂らし体勢を整えてそう囁いた。

「ふ、ぅ…ん、ん」

本当に入るのだろうか。
一度も触れていない自分のものは、信じられないほど硬く膨らんでいる。こんなものを入れて、蓮は壊れてしまわないだろうか。
熱すぎて朦朧としている気もするし、ただ興奮しすぎて頭がおかしくなってしまった気もする。それでもとにかく早くと、腰は蓮に近づく。


「後ろの方がいい?」

穴の位置や体勢を考えてそう問うた。宛がってから、そう思ったから。けれど何故か、蓮の目に悲しみがちらついた。

「蓮?」

「っ…後ろ向き、…方が、い?」

「え?」

意味をもった涙が、焦げ茶色の瞳を滲ませていく。
俺から目を逸らすように顔を背けた蓮は、そのまままた瞼を下ろしてしまった。

「蓮、なんで─」

「ごめ…ちが、くて…前からじゃ、萎え…ちゃう、かな…て」

「っ」

体位に意味なんてない。
ただ後ろからの方が入れやすいかもしれないってだけのこと。

でも、蓮には意味がある?
今までどんなふうに抱かれてきた?

聞けない言葉を飲み込んで、蓮の手を俺のものへと誘導した。


「萎えてねえよ。ガチガチ」

想像を越えて硬く熱かったのか、瞼が持ち上がった。

「な、分かるだろ。緊張もしてるし、しっかり反応もしてる。当たり前だろ、蓮が好きなんだから。好きな人を、やっと抱けるんだから」

こっち見ろ、なんて言わなくても、意味を汲み取ったように蓮の目に自分が映った。


「力、抜いて…」

もう一度体勢を整え直し、小さな穴へ自分のものを押し込んだ。

「ひ、っあ…」

「痛いよな、ごめんな」

背中に食い込む指に痛みを感じたが、こんなもの比にならないくらい蓮は苦しいはずだから。なるべくゆっくり、痛みを感じさせないように…

「んっ、はあ…ふぅ、う」

「もう、少し…だから」

温かい。
狭くて窮屈な蓮の中、俺を締め付ける内壁が、どうしようもなく気持ちよくて、それだけで達してしまいそうだった。

「あ、ぁ…と、ら…虎」

「ん、全部、入った」

繋がった。やっと。

このまま一生離れたくない、本気でそう思う。


「は、ぁ…はぁ…」

汗の浮かぶ額に口付けて、湿った髪にも幾つかキスを落とす。
セックスがこんなにも幸せだなんて、不意に涙が落ちそうだなんて…これは怖いくらいに満たされているってことなのかと、漠然と思った。でも、きっとこういう気持ちを繰り返して、知っていくんだ。

痛いことも、辛い思いも、苦しい話も、全部大事にしなければならない。


「…虎?…うごいて、大丈夫…だよ?」

「苦しく、ない?」

「ん」

「分かった。痛かったら、ちゃんと言うんだぞ」

返事の代わりに、中がきゅっと締まった。
可愛い。


prev next





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -