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▽ 菅原ss


「は〜冷たい。」

雪も積もり始めすっかり冷え込んできた冬のある日。水仕事の多いマネージャー業はこの季節にはけっこう厳しいものがある。そういえば潔子はあんまり手荒れたりしないって言ってたから美人には天は二物を与えるんだなぁなんて思いながら手をさすっていると孝史がやってきた。

「お疲れ。寒いのにありがとな〜。」
「いえいえお仕事ですから。孝史はもう自主練終わり?」
「もう少しやりたかったんだけどこれから雪積もるみたいだから帰れってさ。そっちも終わり?」
「うん。これ終わったら帰ろうかな。」
「そっか。もう遅いから送ってくよ。」

付き合っているとはいえ大事な時期の今、部活部活でまともにデートをする時間なんてなかったから一緒に帰れるだけでも嬉しい。もう少ししたらクリスマスで、みんなでパーティーしたあと少し時間がとれるから今はそれが楽しみに頑張ってる。浮かれてる場合じゃないけどクリスマスくらいは許してもらえるよね。

「悪い!おまたせ。」
「大丈夫だよ。私家近いのにわざわざありがとう。」
「そこは彼氏ですから。…っていうのもあるんだけど実はちょっと渡したいものあったんだ。」

渡したいもの?思い当たるところが無くて首をかしげると菅原はガサガサと鞄の中から荷物を取り出した。それは可愛らしくラッピングされたピンクの包み。

「私に…?」
「本当はクリスマスにタイミング見計らって渡そうと思ってたんだけどさっき手冷たそうだったから先に渡したいと思って。はい、クリスマスプレゼント。」
「ありがとう…!」
「フライングだけどな。」

まさかこんなタイミングで貰えるなんて嬉しすぎるサプライズ。孝史は照れたように笑っていて、たぶん私の顔もだいぶ緩んでるんだろうなと感じながら包みを開けた。

「わ、手袋!すごく嬉しい。毎日使うね。」
「部活中は出来ないけどね。」
「ふふ、寒いしさっそく付けてみようかな。」
「あ、ちょっと待った。」

付けようとした私を制した孝史は私の手を取ると両手で包み込んだ後片方の手を取って指を絡ませた。孝史の手は冬とは思えないくらいとってもあったかい。

「今はこっち。」
「…うん。」
「ちょっと早いけどメリークリスマス。」

そんな言葉とともに触れるだけのキスが落とされる。片手にはもらったばかりの手袋、片手には孝史のぬくもりがあってこんなに寒い夜なのにずっとこうしてたいななんて思いつつ絡めた指先に力を込めた。そしてまだ積もったばかりの雪に足跡をつけながらゆっくりと家までの道を歩いていくのだった。

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