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ナマエの下で拠点を防衛補佐する水精霊ウンディーネメイドたちの朝は早い。
牛舎で飼い育てている家畜の餌遣り世話から、新入りの亜人種たち全員分の朝餉を屋敷内にある調理場で、主人自ら製作手がけたキッチン用品の各種 思う存分活用して食卓を彩る。
脂汚れが付着しない透明な保護膜張る調理台。複製の魔法をクッキングペーパーに掛け、半永久的に使用し続けても無くならず。軽くて丈夫な上級鋼鉄で大鍋や包丁を作り、加熱による変形や風化錆の劣化せず。一定の冷温維持する棚や床下収納、倉庫へ大量の食材を保管しておけば鮮度が落ちないといった、他にも広範こうはんな分野に渡り 主人の画期的な発想から生み出されし魔法道具マジックアイテムによって時間短縮が可能となり、又 非常に気持ち良く拠点内の労働に従事出来ている。
泉の如くあふれる主人の発想はどこからやってくるのだろうか。
メイドたちは前々から疑問に感じていた──或る日を境に。言葉を交わせるようになり その刻のナマエを目の当たりにしてパズルのピースが合わさるよう全て腑に落ちた。

大層お喜びに名を呼び、触れてきた主人の慈しむ様を一生忘れまいとした──次に語り掛けた言葉で「仕事はキツくない?」「気が付いたことあったらなんでも相談してね」
ひと目もはばからず遠慮も何もかも拭い去られ 涙を流し産声を発したのだ。
愛してくださっている、実の子のように慈しむ愛情深き御方の想いに応えなければ──辛いなどと、どうして思いましょうか。何者にも代え難い貴女様に仕え 望外の喜びであります。

ひそかにメイドたちの間で神格化されているとは──。
全く以て把握しておらず(便利なアイテムのヒントあったら聞きたいなぁー)と、ナマエ本人はかるい調子で。身内に対し常に感謝を忘れず拠点での労働改善に勤しんでいる。

新たに備蓄食料を大量に作り置きにする調理し続け。交代で海の警護とアマノミカヅチのお守りや、とこに臥せるエルキーの介護も任に就くメイドたち。今朝はいつにも増して上司のメイド長へ向けて、羨望の眼差しを注ぐ。

日頃完璧に家事をこなしている、よどみなく流れる包丁捌きがいつもの倍以上のスピードで見る見るうちに食材料を山々と積み上げるカーリィナの表情が。他の者からすれば変化を見受けられない、が鬼指揮官と謳われる上司の下、従属して精神的にかなり鍛えてきた優秀なメイド衆だからこそ察する。

カーリィナ様が相当浮かれていることを 理由は言わずとも。
もしかしたら近く、自分も2人っきりデートする日が訪れるかも、舞い上がる心持ちで今夜にでもお土産話し(ご主人様の可愛らしい御姿の出来事)を聞けるだろうか?気持ち躍り姉妹同士で仲睦まじく笑い合って賑やかになる。

獣人ビーストマンをウチに迎え入れてはじめの頃は固かった食堂の雰囲気も、人数が増えたことによりバイキング形式で各々 好きなだけ量と種類を食べられるようベイたちの表情が朗らかになってきてよかった。
何故かメイドたちが自分のとこに運んでくるパンやデザートよそう量 心なしか多めじゃない?
今日の朝ご飯はトマトとアスパラ刻んだスクランブルエッグに、好きなものをイングリッシュ・マフィンやフランスパンに挟んでシャキシャキの歯ごたえレタスとソーセージ肉汁染みたふわっふわ焼きたてパン──万歳したいくらい美味しかった!ジャム&マーガリンは裏切らない美味さ鉄板。ピーナッツバターも最の高。ポテトサラダやオニオンコンソメスープも絶品だった。
食後デザートのカットフルーツもめっちゃ美味でありがたいんだけども!なにぶん量が 残っちゃった分はランチに回してってお願いしてる筈なんけどあれ?これってもしかして──?年上のお姉さんが小さい子に世話焼きするな感じ??

CGキャラメイクによって理想的体型を実現した体であるが、私も一応女な訳で。どうしよう自分用に体重計作るかいっぱい食べた分マジ運動しないと

一日のはじまり朝はしっかり食べて元気を蓄える。ウエストベルトがちょっと苦しいのは食べ過ぎてしまったっ、から、‥っ!太ってなどぃよし!今日も全力で仕事す(遊ぶ)ぞ!!

拠点地上の南西側にある泉で靴を脱ぎ、素足を水辺に浸からせて、分裂小マシュロをクッションの大きさに背もたれにしてナマエは。水中で巧みに泳いでいるセイスと<念話テレパス>でミールとの親交具合い、古城の内部事情等 報告を聞く──
お互い思念でつながっていても 心の奥深くで画策していることまでは感受されてない──アレクサンドルとの以心伝心でも確認できた。現にセイスは不可解な面持ちで言葉に発し聞いてくる

「どうやって‥、あの娘に我ら亜人を受け入れられるようになさったのですか」

(君ら実際ちっこくってかわいいんだよ)とは。彼ら魚人マーマンの威厳に関わる事項なので胸にしまい。水面に上がるセイスの頭をやさしく撫でて

「女のコはいくつになっても白馬の王子さまが迎えにくるのを夢見てるってぇ〜もンなのさ」
「は、 はあ‥‥‥?」
「ミーシャちゃんの作ったお茶菓子食べれた?あの紅茶とクッキーおいしいよねぇ〜作る人が違うと味も全然変わるもんだ。いい調味料使ってるってワケじゃなさそうだし親御さんに作り方教えてもらったのかな?」

褒めるのが上手い。顔を輝かせ主のことを知ろうとするミーシャを追思し。セイスは 唐突にびれに薄ら寒い震えがはしった
相手の懐に入るのが異様なまでに疾い。並の相手では知らず知らず警戒を解いてしまう──僅かでも気を許したところに欲するモノを与えられた相手は信用せざるを得ない。なんと。我らが主はこれを瞬きの内に敵将ロベスの死角──!
射程圏内まで取り入るのを完遂した!

あとは一言命じればが済む───

晴れ晴れとした忠義の念を以て敬服する 主よ。海より深き御心の侭に、貴女様からこの命、生を享けた恩に報います。

大人しく撫でられ続けてるセイスに気を良くし。今度は水中から掬いあげ膝上に抱っこしてやっこい鱗の背中をあやすよう撫でるあー癒しだわぁ〜

体を少しこわばらせるも、おずおずといった感じで腕の中にすっぽり包まるセイスに微笑み。スライムクッションに体重預けリラックス──ほんのしばらくして<念話テレパス>が信号入ってつながる。

──ナマエ様‥‥‥あの、間もなく、っそちらに着くのですが‥
(え?なにかあった───?)

いつもと異なるウーノが取り乱している感じ。セイスも何事か起きることを察知し膝上を離れ、屋敷の方を見張る──

カーリィナとの待ち合わせにエスコート頼んだウーノの身になにが?自分も立ち上がって振り返り。一気に罪悪感に駆られ本当に申し訳なく思い 頬を引っぱたく勢いでパーンっ!と顔面覆う。

どこへ闘いに挑もうとしているのか

ごつくしい迷彩服、軍兵隊員の出で立ちファッションに身を包む娘に唇を噛むようにして悔しさを堪える。
オシャレする女子力磨いてこなかった!
自分の不甲斐なさが今!本気マジで憎ったらしいイイイ──ッ!!


見返りを求めず 与え続ける




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