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良き出逢いであったザリュースとの邂逅を思い返しつつ。
西の海に接する森へと丘小人ヒルドワーフドックたちを引き連れて、ビジネスチャンスの一環である準備を進め あっという間に日が暮れようとするところで帰る支度をし。エイプリルと一緒に海岸に足を運ぶ。

片や 突然現れて圧倒的な実力差を見せつけた未知数の脅威秘めし子どもの仮姿した大魔神ことナマエ・エリクシールと。

片や 従者と思しき大男アーク(の理不尽な暴力)によって残らず十二の頭全部をたんこぶノックアウトされ。大魔神もといエリー名乗る少女の軍門に下った、荒くれ多頭水蛇ヒュドラアマノミカヅチが岸辺で面と向かい合う。

十年もの歳月渡って威光を示し、西海に幅を利かせてきた自尊心が粉々にぶち砕かれ。従う以外の選択肢を放棄したアマノミカヅチは正直いって恐怖を体現するエリーを視界に入れもう卒倒寸前。

顔が真っ青、白目を剥くアマノミカヅチの不可解な様子に(どーした?アイツ)と交代で面倒見るようお願いしてる水精霊ウンディーネメイに念話で尋ね。要は怖がっているとな?心外だと言わんばかり肩を竦める。

アンデッド大群を塵芥のよう一瞬で滅ぼしたナマエの行動一つ一つが死につながると脳裏に刷り込んでる。そのエリーが両腕をかるく上げる仕草だけでもビク!と震え上がり八メートルにも及ぶ巨体もカタ無し、縮こまる始末。

やれやれとため息をつき。胸の前で両手合わす一拍手し職業スキルの一つ使う、任意の荷物を足元に転送。漂ってくる芳しい香に途端 空きっ腹をぐうぐう鳴らし瞳が光を帯びるアマノミカヅチ。欲に素直なのねー!

メイドと分担して十二の頭それぞれに家畜用の餌である果物や余りあるパンの食料を口に放ってあげる。満足げに腹に収め<念話テレパス>とは言えないまでも、甘えた喉を鳴らし食べものの名前を言葉ではなく 活力に満ちた感情を発してこちらに聞いてくる。ちょっとかわいいな、とか思ってしまった。
っふ、騙されないぞ次もあれが食べたいこれを寄こせと要求するつもりなんだろうそんな見え透いた罠に引っかか

すり寄ってくる肌ざわりがよく艶のある頭についつい手が伸びる

──騙されるっ‥ものか!

さっきまでの威厳はどこへやら。
陽が昇る前から働きに取り込んだ頑張りをねぎらい、一頭ずつ撫でて礼を伝える。じぃっとアマノミカヅチを羨望のまなざしで見つめていたメイドお二人さんにも同じよう、感謝をし すごい照れようだった。知的な美人さんの照れ笑いって素敵だなぁ

メイに引き続きアマノミカヅチの面倒と海域警備を頼み。帰り支度整ったドックたちと合流して帰路に着く。


屋敷の玄関前で出迎えを受けカーリィナに並び、セトラとフェリシアにただいまの挨拶する。

「皆紹介するよ。彼女たちがこの前 話した母子おやこ
「ややーっお逢い出来てうれしいです」

ドックを先頭にして丘小人ヒルドワーフ一同、各々自己紹介してちょうどスリーピーがその場で眠り落ちる。うん予想してた。

「だいじょぶ!?」
「うんうんいつものことなんで。心配ないよー」
「運んで差し上げてエイプリル」
「畏まりました」

カーリィナの迅速かつ適切な指示で地下にある寝床に移動してあげる。ドワーフを見るのは初めてか興味津々そうドックたちに質問攻めしてるフェリシアになごみ──一方。かげのある表情でこちらをうかがうセトラに笑顔向ける。
カーリィナに視線を送り、問う

「アレクから<伝言>メッセージもらってないけど帰ってたりする?」
「いえまだ。御夕食は頂くと申していたので直に
帰ったぞお!

意気揚々と仕事クエストから帰ってきたアレクサンドルを捉え 直ぐ様、矢のような素早さでカーリィナが疾走し兄の元へ

湯浴みしてきなさい‥!

必死に押し留めようとする。遠視の眼を持つナマエも見えた、いくら魔法で作成し汚れない仕様になっている衣服でも土埃とかモンスターの返り血がそこかしこに──稼いできてくれてホント申し訳ないんだけど離れているこの距離でも匂いがあれだよ。あ。カーリィナが水ぶっかけた。ごめんねお兄ちゃんが私もちっさい頃泥だらけになるまではっちゃけ遊んでたんだっけなぁ!超ごめんなさい!!

身に覚えがありすぎる過去の幼少期。いとこの兄と屋内にも関わらず「何でこんなに汚すの!?」って毎度叱られたわ。
全力で遊びまくった頃の思い出を回想するも怒号する息子の声に引き戻され、二人の間に割って入る。

「おかえりアレク、あー‥‥そのご苦労さま‥(風呂に入ったほうがいい‥!)」
「う‥っ!お 応、分かった‥」

カーリィナを怒らせたらヤバイ。(主に食事にありつけない)ことを察しているナマエとアレクサンドルは至近距離なら以心伝心可能。水浸しになっている次男の体表濡れた水分を弾き、報酬の入った手持ちの袋を母親に預ける素早い連携とる。
手渡す際にナマエの袖口や襟元から細かい木くずが散っているのを首傾げる。

「あっそうだカーリィナ」
「はいナマエ様」

地鳴りでも起きそうな不穏な佇まいから落ち着いたか。普段あまり感じられない娘の感情の起伏を実際にお目にかかれ感動し、サムズアップしながら提案する。

明日デートしに行こう

大浴場へ転移しようとしたアレクサンドルが顎外れるくらい大口開けて 目の前のカーリィナも真顔で直立不動。二人とも固まった。


え?なに。なんか変なこと言った?




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