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体格身長差、筋肉量、単純な腕力のせめぎ合いならアレクサンドルに軍配上がる

主とその一の従者が対峙し。互いの気迫が大気唸らせ突風吹き荒ぶ。ベイとゴルドは待ち受けるしごきもあるが、立っていられず身を低くし暴風に攫われないよう爪を地面に両拳ごと釘打つ。息が詰まる。これでまだ動き出していないんだぞ何だってこんな奴ら

(本当に世界を一変する気だ──ッ!)

見てみたい ああ何だって糞

魅入られてしまった

(こんなモン魅たら後戻り出来ない、)

恐怖を打ち消す興奮が湧き心が躍る!
同族引き連れて傘下に入った選択が間違っていたか等、ナマエを前にしてそんなモノ無意味だ。出逢ったのが運の尽き。
この極上の女に付いて行かない方が阿呆だろ!

腹底から湧く喉の奥で笑い声を上げる頭目・ベイの真横で。ビックリ通り越してゴルドはビビり過ぎて失神する寸である(美味い魚食えたあと心残りがあれば生きてる内に済ませておこう)覚悟決めた

自身も吹っ飛ばされないよう槍を突き立てて、ウーノはあらん限り試合ゴングの合図を大喝張り上げる

「始めエッ!!」

想像してみて欲しい──
もし。眼前にそびえる二,三メートルある巨躯の魔獣。全身を覆う漆黒の剛毛は金剛石ダイヤモンド以上の硬さ、剣を突き立てても傷一つ負わない。頑強な剛毛は灼熱マグマの超高温にも耐え得る。

アレクサンドルの属性は── 「火」

巨大な拳を奮う腕力と掛け合わせて
肘から火を噴き出すことが出来たら?

爆発推進力をも上乗せした拳の一発は
ミサイル発射の威力に匹敵する。

音速超えたソニックブーム衝撃波が発生しこの一撃なら人魚マーメイドの強固な鱗でさえ破壊出来る。だが目の前の馬鹿大将は女児のまま人間の皮膚を保つ

舐めてンのか

怒りで爆発力が更に増す、ムカっ腹立っていた憂さ晴らし込めて。棒立ちしてる澄まし顔に

黒に視界を奪われる ここで意識飛んだ

一瞬よりも刹那にして対決が勝敗帰した

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥え?

暴風が破裂して掻き消えたと思ったら。アレクサンドルが地面に突っ伏してた

ベイたちは一体何が起きたのか状況をまったく理解していない。刹那の間だ解るなんて出来る筈もない。本当に刹那でドでかい図体の魔獣が顔面から地面へめり込んだのだ、疑問符が頭を占める。

「ふむ」

しげしげと今の感覚忘れないよう頷くナマエ。動いてない、手も出していない。やったのは<水流操作>の応用で──窒素を=「風」を操作してみたのである。

我々の体を取り巻いている大気。空気とは。吸って吐いているのは酸素や二酸化炭素だけではない。

空気中の成分約七割以上を占めているのはこの「窒素」に他ならない。残り三割が酸素や二酸化炭素、それに僅かばかりの水素に若干の塵芥。

選択した職業クラス<錬金術師アルケミスト>の固有スキルによってナマエは元素を構成する核となる原子を操ることを可能にした。更に水属性最高位種族「水」にまつわる総ての事象を掌握せん。

水素すらナマエは感知し自分の武器として早変わりする。それじゃあ詰まらない──物理攻撃を全部跳ね返せるとか、チートもいいとこ。世界は広い、私より強い者は居ると考えていい。

手合せするまえに言った「試したいことがある」それを実戦でやってみた。
人間相手では敵にも成り得ないその証明 知っておきたかった

(しかし息子よ‥‥‥マジで殺す気できたな 思い切りの良さはまぁ私似だわ)

奮う拳が逆方向に、まさか自分にカウンター返ってくるとは予想だにしてなかったろう。結果が自滅、渾身上乗せ重ねた所為でとうぶん起きないな。

鼻血出てる息子を仰向けに寝かせ、分裂してる小サイズのマシュロを掌から召喚 体積を膨張させてクッションに、枕として看護を任せる。

「さてと」

くるっとこちらに振り向く凛とした少女なんか居ない。

心身すくみベイとゴルドは死を目前にじりじりと後ずさる──あれは正真正銘の大魔神だ

「がおー」
「「ウオギヤアアア!!!」」

かけっこ追い掛けてくる(ベイたちからしたら超スピード疾走)ナマエから死に物狂いで逃げ走る。

「まてまて〜っ!」

お助けの懇願が絶叫上がる。気絶してなさる上司のアレクサンドルを診るべきか 遊んでる主を止めるべきかパニくるウーノを捕まえて、追いかけっこを一緒に。肩車してナマエ号の発進である。

スタミナが衰えていた獣人ビーストマンたちの良いリハビリになることだろう。


言うことなにしよっかなー




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