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綾小路若葉(あやのこうじ わかば)。父様の、一番上のお兄様、つまり叔父様の息子で僕の従兄弟だ。若葉は小さいときから、よく叔父様がこの家に連れて来たり僕たちが叔父様の家に行ったりして遊んでた。
小さい頃の若葉はそれはそれはかわいくて、僕と並んで『二人とも女の子みたいだね』って言われてた。
若葉は見た目通り、とても気が弱くて泣き虫で。一颯がいつも面白がってかえるやバッタなんかを若葉に投げつけて泣かされているのを僕が助けたりしていた。

若葉はそんな僕をまるでヒーローのように扱って、いつもいつも
『はーちゃん、はーちゃん』
って犬コロみたいに僕の後ばかりついてきていた。

そんな若葉は、小学校二年生になる前に叔父様の仕事の関係で外国に行かなくちゃいけなくなって。僕と離れるのをすごく嫌がって泣いて泣いて大変だった。


「はーちゃん、ぼく、ぼく、絶対帰ってくるから!帰ってきたら、はーちゃん、ぼくのお嫁さんになってね。はーちゃん、大好きだから、絶対ね。」


しがみつかれてうっとおしいので適当にうん、って返事したんだっけ。いや、別に若葉と離れるのが寂しくないわけじゃなかったけど。

若葉は日本に戻ってきて、僕の学校に転入することになったそうで。僕のいないうちに我が家に挨拶にやってきて、まだ自宅の片づけが住んでいないことを告げる若葉にそのまま父様が泊まって僕たちと一緒に学校に行くことを勧めたらしい。その時に、朝いきなり僕の前に現れてびっくりさせようとしたとかなんとか言ってたけど朝まで我慢できなくって僕の布団にもぐりこんだと。

よくよく考えたらセキュリティが万全な綾小路家に不法侵入できるやつなんかいないよね。


「はーちゃん、俺、約束通り帰ってきたよ!ずっとずっとこっちに住むことになったんだ!だから、はーちゃん」


僕の手を取り、結婚してね、という若葉をとりあえず殴り、部屋から放り出して鍵を閉めた。



「おっはようはるのん!何だかご機嫌ナナメだね?あの日?キャッ!」
「何!?はるのんとうとう来ちゃった!?お赤飯炊かなくちゃ!」

次の日の朝、登校するとすぐに近づいてきてバカなことを言う七元、笹岡の二人をじろりと睨む。いつもいつも変な事ばっか言ってからかうんだから!

「はーちゃん、そいつら、誰?」

僕についてきた若葉が、後ろから僕を急に抱き込み笹岡と七元を威嚇するように睨みつけて低い声で唸った。笹岡と七元は、突如現れた若葉に目を見開いて驚いた後、すぐにいつものようにへらりとした雰囲気をだした。

「俺ら、笹岡と七元。一颯の友達ではるのんの恋人だよ〜ん!」
「そうそう、はるのんたら俺らにやきもち妬かせようとしてそんなのつれてんの?もう、死ぬほど妬いちゃうから離れて俺らの胸に飛び込んでおいでよ〜ん」

けらけらと笑いながら僕の手を引き、若葉から引きはがしたかと思うと七元がぼくをむぎゅ、と自分の胸に埋めた。顔!顔全部がふさがって苦しいから!

だん!と足を思い切り踏んでやると情けない声を出して踏まれた足を持ち上げてぴんこぴんことケンケンで跳ねまわる。すると今度は自由になった僕を笹岡が後ろから抱きしめてきた。

「はるの〜ん!俺たちを捨てないでえ〜!捨てられたら俺ら悲しくって泣いちゃうから!」
「ばかじゃないの」

ぐりぐりと頭を肩に押し付けてくる笹岡の頭をばしんと叩き、肘をみぞおちに入れてやると跳ねていた七元にぶつかり二人まとめてこんがらがって転んだ。そんな二人を遅れてやってきた一颯が『今日の一枚』何て言って助けるどころか笑いながら携帯で写メを撮っていた。

「若葉も暑いからくっつかないでよね。一颯、僕日直だから若葉を職員室に連れて行ってやってよね」
「はるのんひでえ!おいてかないで〜」

そのまま振り返りもせずに歩く僕は、笑うように言う笹岡と七元のその言葉がどんな顔で紡がれていたか知る由もなかった。

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