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3

うんざりしながら教室に入ると、周りの人間が、特にいわゆるチワワ系の男子生徒たちがきゃあきゃあと騒いでいる。その内容は今日の転校生、若葉についてだ。一颯に連れられて職員室へ向かう姿を見かけた生徒が、ものすごい美形が来たと言いふらしたらしい。


「はーちゃん!」


休み時間になり、僕の教室に若葉が飛び込んできた。後ろには一颯と、笹岡に七元。どうやら若葉は三バカトリオと同じクラスになったらしい。4人が教室に来たことでチワワたちが余計に色めき立つ。それもそうだ、一颯たち3人は元々イケメン揃いで人気があるところに若葉が連れ立っているんだもの。極上のイケメンたちが4人も揃うとそりゃ騒ぎたくもなるよね。うるさいから迷惑なんだけど。


「はーちゃあん、俺、はーちゃんと離れちゃったよう!さみしいよう!」
「こらこら若葉、はるのんが潰れちゃうから離れなさい」
「そうそう、ちみっこだから若葉が抱きつくだけで姿が見えなくなっちゃうんだからね」

誰がちみっこだ、誰が!

めそめそと泣きながら僕にしがみつく若葉を蹴り飛ばして引きはがすと、嘘くさい演技で笹岡と七元が駆け寄って『大丈夫か!』などと叫ぶ。

「誰か、誰か医者を!」
「お客様の中にお医者様はいませんか!」
「むしろナースはいませんか!もしくはナース服を持っている方はいませんか!」
「うう、お、俺はもうだめだ…、せめて、ナース服を着たはーちゃんの上で腹上死をしたかった…」


がくりとわざとらしく倒れた若葉に三人が『わかばああああ!』なんて悲痛な叫びをあげる。
…なんなのこのばからしい茶番劇は。誰がナース服着るだって?

どうやら若葉は三人と良くも悪くもあっという間に仲良くなったらしい。ああ、三バカがカルテットになっちゃった。バカな事ばっかり言ってるこの4人を見て頬を染めて
『僕がナース服着てあげるー』なんて言ってるやつらもどうかと思うけど。

4人でげらげら笑いながらじゃれあって遊んでるのを見て何だか頭が痛くなった。



それからというもの、若葉は3人とつるんでいつも僕の所にやってくる。笹岡と七元は前にもまして僕をからかってくるようになった。全部軽くあしらったりしてやってるんだけどこうも続くといい加減うんざりしてくる。昼休みの今も絡んでくるのを上手く目を盗んで逃げだして一人になれた校舎の裏庭でほっと気を緩めてご飯を食べながら、そろそろ本気で一回文句を言ってやろうかと思っていた。


「はーちゃん」
「…なに」


ああもう、どうやって僕の場所を嗅ぎつけたんだろうかこのわんこ。いつの間にか僕の所に来ていた若葉をじろりと一瞥してお弁当を片付ける。ちょっとはゆっくりさせてくれないかなあ。あ、でも珍しく一人だ。笹岡と七元はどうしたんだろう。

「…はーちゃん…」
「若葉…?ちょっ…、」

若葉は、泣きそうな顔をしたかと思うと僕にぎゅうと抱きついてきた。

「はーちゃん、はーちゃん…!」
「ちょ、若葉…、おも、い…っ!」

そのままのしかかるようにしてきたので重さに耐えきれず僕は後ろに倒れてしまった。それでも若葉はどくどころか、ますます密着して抱きしめてくる。なに、なんなのもう!重たいんだけど!
文句を言おうとして、ふと顔を上げた時に僕を見つめる若葉の顔を見て僕は息をのんでしまった。
切羽詰まったような、苦しそうな。

「…若葉…?」
「…はーちゃん、…好きだよ。好き、なんだ。ずっとずっと、はーちゃんのことが好きだった。今日まで、理由があって我慢してたけど、もう我慢できないよ。…お願い、はーちゃん。俺を好きになって。…俺のものになって…!」

そう言うと、若葉はゆっくりと顔を僕に近づけてきた。そんな、まさか。

「…っ、や…!」


「は〜い、若葉。ストップ〜!」


あと少しで唇がくっつく、というところで僕の上からばりっとでも音が鳴る勢いで若葉が引きはがされた。

「ひ、ひどいよ、笹に七!あとちょっとだったのに!」
「ひどいのは若葉でしょ〜!抜け駆け禁止令忘れたの〜?」
「そうそう。いなくなったかと思えばこんなところではるのん無理やり組み敷いちゃって。うらやましいだろうがこの野郎」

へらへらと笑いながら、若葉の首根っこを掴む笹岡とその若葉にでこピンを食らわせる七元。僕はほっとしながら、笹岡が言った言葉に首を傾げた。


「…抜け駆け、禁止令…?」


僕がつぶやくと、笹岡と七元は僕を見てにこりと微笑んだ。


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