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6 涼介side

きっかけは、ほんの些細な友人との会話だった。

「なあ、お前恋人に嫉妬させたことある?」

ニヤニヤと笑いながら話しかけてきたこの友人は池上といい、俺と同じく結構なイケメンで、とても遊び人だった。本気で付き合っている子はいないらしく、付き合った子には嫉妬させるのが好きで、やきもちを妬いている姿に欲情するらしい。

「嫉妬する顔ってマジいいぜ。こいつ俺の事に必死だなって、めっちゃ優越感感じるんだよね〜。いっぺんやってみ?くせんなるから」

そんなこと言われても俺はそんなつもり全くなかった。せっかくラブラブなのに、わざわざやきもち妬かせるようなことしなくてもよくない?
池上の言うことがさっぱり理解できなくてその時はさらりと流した。

でも、その日の放課後。俺は部屋の前で一人の男の子に呼び止められた。真っ赤になって下を向くその姿から、告白だなってぴんときた。もちろん、受けるつもりなんてなくて丁重にお断りするとその子はぽろぽろと泣きながら一度でいいから抱きしめてほしい、それで諦めるからと必死になって懇願してきた。
かわいそうだけどそんなこと、としどろもどろとしている間にその子が俺に抱きついてきて。驚いて引き離そうとしたその時、少し離れたところに恋人の翔が呆然と佇んでいるのに気が付いた。

やばい、誤解される!

慌てて引きはがすと、翔はずんずんと俺に近づいてきて。俺に怒鳴った。
胸ぐらをつかまれて、ものすごい勢いで俺に食いついて。

「おっ、俺っ、…、俺が、一番、涼介のこと好きなのにっ…!他の奴なんか抱きしめんなよぉ…!」

涙を流しながら言った翔のその言葉に、顔に。胸がぎゅっと熱くなった。

「…ほんとごめん。告白されて断ったら、抱きしめてくれたら諦めるって言われて…。ごめんね。愛してるのは翔だから。」
「…ほん、と…?」
「うん、本当。ね、翔。翔が一番俺を好きでいてくれるんだよね?嬉しい」
「…ん、好き…。一番、好きだから…。もう、するなよ…」

そう言って俺にすり寄る翔がすごくかわいくて、愛しくて。

あの時言った池上の言葉を、本当だなんて愚かにも思ってしまった。


それから俺は徐々に浮気を匂わせるような行動をするようになった。あの時の翔がもう一度見たくて。一回だけ。あと一回だけ見ることが出来たらやめよう、なんて思ってた。

実際、俺の浮気を疑って怒る翔はかわいくて。ああ、俺愛されてんなあってじんとした。
そんなことばかり繰り返していた俺はどんどんどんどん貪欲になっていった。もっと嫉妬してほしいと思った俺はある時部屋にかわいい子を連れ込んでみた。ちょっとドキドキしながらソファで抱きしめてみると、タイミングよく翔が帰ってきた。ところが、俺はやりすぎてしまってなんと翔に泣きながら『別れる』と言われてしまった。これには心底驚いた。
嫉妬させたかっただけで別れるつもりなんてかけらもなかった俺は必死になって翔に許しを乞うた。
『お願い、愛してるんだ』
その言葉に泣きそうになりながらも俺を許した翔を見て、今度は俺は浮気で怒る翔が俺の『愛してる』で陥落するさまを見るのがものすごく楽しくなった。

何度も何度も同じことを繰り返し、俺の感覚は徐々に狂っていったんだと思う。誕生日の日、頬を染めながら俺に『ふたりでお祝いしような』と言ってくれた翔が本当に可愛くて。嬉しい、と言った俺にとても嬉しそうに微笑みを返した翔を見て、そう言えばあんな笑顔久しぶりに見たな、なんて思ってた。

そして、俺はバカな考えを思いつく。

あの笑顔は嫉妬してた翔が久しぶりに俺に甘い顔を見せてもらえたからこそ出たんだ、と思ったのだ。
今日の誕生日、うんと嫉妬させてからめちゃくちゃに甘やかしてやったら、朝以上の笑顔を見せてくれるんじゃないか。



それが、翔が俺に見せてくれた最後の笑顔になるとも思わずに。

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