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14

「え…、え…!?」


完全にパニックになって、俺は目を白黒させて言われたことを必死に頭の中で整理する。先輩、何て言った?俺の事が好きだから、付き合えないって、じゃあ、じゃあ先輩は、俺の事が好きなの…?


「…君が、空き教室で本当の事を話してくれた次の日から、今まで付き合ってた子に謝罪して回ってるって噂に聞いた。それで、誰に告白されても受け入れないって。…ほんとは、君が俺をたまに見てるの、知ってた。それから、図書室にいてるのも。噂を聞いて、たまに感じる視線や君の行動を知っても、俺、ずっとずっと無理やりそれを無い事にしてた。終わった事だから、もう俺には関係ないからって。」


噂、聞いてたのか。そりゃそうだよな。俺、今まで付き合ってたやつ多かったし。目立つ方だから、一貫した行動をすればそれがすぐに俺に興味を持つやつらに広がる。でも、それでも、改めて言われるとキツイ。


「そうして、君の事をわざと気にしないふりをしてたら…、君の友人だって子が、俺を訪ねてきたんだ。中岡、翔君って言ってた。」


その名前を聞いて、俺は今までで一番驚いてしまった。中岡翔ってのは、確か涼介の彼氏だ。俺のせいで、涼介に浮気されて、別れるはめになってしまった。恨まれこそすれ、友人だなんて言ってもらえる覚えもない。


「それで、君に会ってやってくれって。君は今、俺のために、変わった。俺が君を許せないのは、君を好きだからだろう。されたことは許せなくても、自分の為に変わった人間のこれからを見てやることもせずに本当の気持ちに蓋をして逃げてたんじゃ、どっちも幸せになんてなれない。会って、ちゃんと話すべきだ。これからの事を、二人で。関係ないと決別するのはそれからでも遅くない…って…。」

先輩から知らされた、中岡の言葉に体が言いようのない震えに襲われるのがわかる。中岡とは、あの時にしか会ったことがない。俺が自分のしてきたことを今までの奴らに謝罪して回っている最中に、涼介と会ったあの時。涼介とそいつに、初めて自分のしたことで別れてしまったことを一言だけ詫びた時だ。隣にいたそいつは無表情に俺を見ていた。

あんな、あんなことをしでかしてしまったのに。二人の仲をめちゃくちゃにしてしまった俺のために、わざわざ先輩に会いに行ってくれたんだ。涼介があいつと付き合うって言った時、俺はなんであんな平凡な奴とって内心小ばかにしてた。でも、涼介の目は正しかったんだな。人の心を自分の都合でひっかきまわして、人を傷つけることしかできない俺なんかとは器が違う。

押し黙って俯いた俺の手を、先輩がそっと両手で握りしめる。


「彼に言われて…、俺、意地を張ってるだけなんだって気が付いた。俺こそ、自分から気が付かなくてごめん。あのね…、聞いてくれる?
俺が辛いのは、君が好きだから。いつだって、君が誰かに優しくしてるのを見るのは辛かった。好きだから、君がしてたことがわざとだったって知って悲しかった。そんなことで愛情を確かめないで。
俺だけ見て。俺に…っ、君が、どれだけ好きか、直接聞いて…?、そ、そしたら、ヤキモチなんか、妬かせなくても…、どれだけ、君が好きか…っ、嫌ってほど、伝えるから…!っ…、」

先輩からの極上の告白を聞いて、俺はたまらず先輩を抱きしめた。久しぶりに触れる、その体。ああ、先輩って、こんなにもあったかかったんだ。

離すまい、と後頭部を押さえてぐっと自分の肩口に先輩の顔を埋めさせて、背中に回した腕で体が反るくらいに自分に密着させる。

「先輩…、先輩、先輩…っ!」


ぼろぼろと、俺の目からも涙が溢れてくる。拭う余裕なんてなくて、泣きながら先輩の名を呼ぶことを繰り返す。


「先輩、ごめん…!今まで、傷つけてごめん…!バカなことしてごめん…!先輩が、好きだ…!二度と、二度と傷つけたりなんかしないから、もっかい…!もっかい、俺と付き合って…!」


もう、二度と間違えたりしないから。


子供みたいに先輩にしがみついて懇願した俺に、先輩は肩に埋めた顔をしっかりと縦に動かして、俺の背中に手を回してくれた。

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