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12

部屋に帰った俺はベッドの上で先輩にヤキモチを妬かせるためにしてきた今までの事を思い出していた。そして、そのときの先輩の顔も。

最終的に別れを告げられる原因となった、あのキスを見たときの先輩の顔。


今になって、どれもこれも思い出すと喜びどころか罪悪感で胸が苦しくなる。


別れてから、先輩が友達だっていうやつと一緒にいた、あの時。
俺が生まれて初めて感じたあの黒い思い。


嫉妬って、こんなに苦しいものだったんだ。辛いものだったんだ。自分が身を持って知った今、こんな思いをさせていただなんて、と後悔の念しかわかない。先輩の言うとおりだ。俺は、ただのバカだったんだな。

先輩に、見限られても仕方ない。それほど俺は人として間違っていることを今までしてきたんだ。

『やっぱり君はおかしいよ』

先輩の最後の一言を思い出して、胸を抉られるような痛みをおぼえる。
そうだね、先輩。俺、おかしかったんだな。

今になってようやくわかった。

先輩を…好きだと自覚して、やっと気付くことができた。



だけど、全ては後の祭り。先輩はバカな俺に愛想を尽かして離れてしまった。あの様子だと、二度とそばにもよらせてもらえないだろう。

二人、並んで本を読んだあの図書室での日々を思い出す。何も話さなくても、静かに流れる時間がひどく心地よくて。あんなにも、温かかったあの日は二度と俺には手に入らないんだ。



それから俺は、今まで付き合った奴らを順番に一人づつ呼び出した。今までの愚行を謝罪するためだ。反応は様々で、びっくりする奴もいれば、泣き出す奴、怒る奴、笑う奴。殴られたりもした。

先輩には二度と近づかなかった。元々校舎が違う俺たちは接点がなくなればすれ違うことさえない。たまに中庭のあたりで友達と歩いて笑ってる先輩を見かけて泣きそうになる。ほんとは、先輩にも謝罪をしなきゃって思う。だけど、今の俺は先輩のことを簡単に吹っ切れそうにないから。今までの奴ら全員に謝ることができて、先輩の幸せだけを願える立場になれたら会いに行こう。

そんな中、ダチの涼介に会った。こいつは俺が『ヤキモチを焼く恋人って最高だぜ』と焚きつけて、俺と同じようなまねをして一度恋人に振られたって聞いた。その後しばらくして、またよりを戻したらしい。

そういや俺、こいつに忠告されたよな。
『本当に大事なやつは、泣かせるな』
って。今になって、こいつの言った意味とその時の気持ちが痛いほどわかる。そう伝えるとひどく驚いた顔をしていた。


「涼介、悪かった。お前の恋人にも…俺のせいで辛い思いさせてごめん」


あんなことになってしまいながら、こいつら二人が元サヤに戻れたのは奇跡ではないかと思う。それが、ひどくうらやましい。だけど、同時に心からよかったな、と幸せを願える。同じ立場だけど、俺はきっと先輩に許してはもらえないだろうから。
同じ立場であったこいつらには、幸せになってもらいたい。



こんな風に思えるようになったのも、先輩のおかげだ。きちんと自分の間違っていることを気付かせてくれた。

今度、好きな人ができた時。先輩以外にできそうにはないけれど、もし万が一そんな人ができたなら。


俺は、きっとその人を誰よりも大事にできると思う。

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