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「―――君は、…君は、バカなの…?」
「は!?」

悲しそうに眉をよせ、心底あきれたようにため息混じりに呟かれた言葉に俺は思い切り怪訝な返事をした。
だって、バカだって?意味分かんねえ!俺の気持ちがわかったんじゃねえのかよ!

「…君は、さっき、俺が友人と話してるときに俺の腕を引っ張って連れ出したよね。どうして?」

「どうしてって…!そりゃ決まってんだろ!先輩が、俺以外の奴に笑いかけたりするからっ…!俺以外の奴にあんな笑顔を見せるだなんて、むしゃくしゃして。先輩は俺のものなのにって!」




…なのにって…、思って…?
あれ…?



そこまで怒鳴って、俺は自分が言ったセリフに自分で首を傾げた。なんだ?俺が今言ったのって、どっかで…



「…それって、ヤキモチ妬いたんじゃないの?」
「…!」


ヤキモチ。これが、ヤキモチ?

俺は、今までつきあった奴を自分からこんなに必死に追いかけたことなんてない。さっき先輩に抱いた感情なんて、他の奴らじゃ感じたことなんてなかった。
だから、これは先輩がおれの思い通りにならない事に対しての怒りだと思ってたのに。

「…自分が、どんな顔してるかわかる?さっきの君の顔も、今の君の顔も、俺はちっとも好きじゃない。大事な人が悲しむ顔なんて、見てもちっともうれしい気持ちになんかならないよ…。そんな顔、俺は絶対にしてほしくなんかない!好きな人には、いつだって笑っててほしい!君はやっぱりおかしいよ!」



指摘された事に混乱して力の抜けた壁についていた俺の手を、先輩は思い切り払って駆けだして行ってしまった。

バタバタと走り去る先輩の足音が聞こえなくなっても、俺はその場に足が縫い付けられたように動けなかった。


ふと、ポケットの中から携帯をとりだして真っ黒なディスプレイに写った自分の顔を見る。

「はは…、なんだこの顔…」

そこには、ひどく泣きそうに口をゆがませて濁った目をした自分がいた。普段のイケメンなんて欠片もない。ただただ、情けなく憔悴した顔がそこにはあった。

「…」

それから、自分が付き合ってるときにわざと浮気な素振りを見せつけていた時の先輩の顔を思い出す。


「…俺、バカだ…」


言われるまで、気付かなかった。そんな風に見たことなかった。いつだって、そんな顔で自分を見る恋人に優越感を抱くだけで。
先輩が言うように、笑っててほしいだなんて考えたこともなかった。でも、そんなの本当に好きな人へすることじゃない。好きな人に、そんなことできるはずがない。



今、やっとわかった。



俺、先輩が好きなんだ。


壁に拳を打ち付け、それに額を当ててぐっと唇を噛み締めた。

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