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6

堤は白河が何を言っても何をしても相手にしない。同室だが、完全にいないものとして扱った。

だが、懲りもせず信者たちを連れて部屋にやってきて、
『あ、き、気にしないで。俺、ひとりでできるから!つ、堤くんに、これ以上迷惑なんて…』
と涙をためた白河を見たときにはお前は俳優になるべきだと勧めた。

あの腕を引かれた日から、相田が白河の傍にいるのを見たことがないな、とふと気が付いた。


今さら…。自分が何をされたのか、何を言われたのか忘れたのか?


その事実に少し嬉しく思う自分を蔑んで、胸の奥の奥にくすぶった想いには気付かないふりをした。



それからまた数日。相田は完全に白河と共にいることがなくなっていた。共にいるどころではない、その姿を学園の生徒、誰一人として見た覚えがないのだ。部屋に相田のファンが訪ねても、返事が返って来ることはないらしい。セフレと部屋にこもりきりなのでは、とうわさが流れはじめた。

「…隊長…」
「…もう俺は隊長じゃないよ、副隊長だった根岸君。」

そんな噂が流れる中、堤に声をかけてきたのは相田の親衛隊の副隊長だった男だった。

「お願いです。相田様の所に行ってください。」
「…どうして俺が?キミが行けばいいじゃないか」
「堤隊長!」

皮肉を込めてそう返せば、ひどく切羽詰まったような声で名前を呼ばれハッとした。その目が、悲しそうに揺れている。

「…ごめん。でも、俺は…もう関係ないから」

いくら解散したとはいえ、自分の大事な部下だった人間にそんな言い方を返してしまったことに対して素直に謝る。だけど、根岸がなぜ『相田に会いに行け』というのか、堤にはさっぱりわからなかった。自分が、相田にこっぴどく振られたことを知っているくせに。
拒否の意思を示すと、根岸は泣きそうに顔を歪め、ふるふると首を振った。

「関係なくは、ないです。相田様が、なぜ部屋にこもりきりなのか。なぜ学園でその姿を見かけることがないのか。あなたにはそれを知る義務があります。」
「は?」

根岸の言葉に堤が眉を寄せ一言だけ返事をする。何を言い出すんだろうか、この男は。

「俺にそんな義務なんかあるはずない」
「いいえ、あります。行けばわかります。」

いかない、という堤の意志を完全に無視して、根岸は堤の背中を押して歩かせると、生徒会役員の部屋へと続くエレベーターの中に放り込んだ。

「おい!」
「では、よろしくお願いいたします。」

押し込まれて振り向くと同時に頭を下げた状態の根岸を置き去りに無情にもエレベーターの扉が閉まった。きっと根岸は、あそこで見張るだろう。堤は仕方なしに、副会長である相田の部屋の階で止まったエレベーターから足を踏み出した。

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