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3

「はっ、やっと認めやがったか。」

堤の変化に戸惑いながらも、生徒会長がえらそうに鼻でばかにして笑う。そんな態度にも堤は怯えたりすることはなかった。それが、余計に戸惑いを生む。
自分たちの知る堤恭平と言う男は、控えめで、健気で、いつも誰に対しても一歩下がった態度だったはずなのに。

「ええ、ええ、それでいいですよ。だってあんた方はこっちが何を言おうと聞く気がハナからないんでしょ?いじめをしたのも俺、未練たらしくしていたのも俺。白河が優しいからって調子に乗ってました。」

この男は、本当に堤なのだろうか。あまりにも今までと違うその冷めた物言いと態度に皆が呆気に取られる。

「み、認めるんだぁ?やっぱそうなんだね、さ、最低〜…」

やっとのことでそう言った会計も、口振りは堤を責めるようなものだが目は泳いでしまっていた。

「だからそうだって言ってんでしょ?認めてあげますよ。それから、親衛隊解散だっけ?了解了解。じゃあ今をもって俺、堤恭平は親衛隊隊長を解任ってことで。退学もお好きにどうぞ。あ、今からだと1ヶ月後くらいですかね。じゃあその間はもう一般生徒だし、あんたらとは一切関わらないから。」

ピシャリと言い切る堤に、誰もが口を開けたままになった。まさか、退学までいいと言うだなんて。確かに自分たちは、白河を迫害する他の生徒たちを実家の力を使い、退学にすると脅しにかけていた。その脅しに、どんな生徒も顔を青ざめ、許してくださいと懇願してきたのに。

「どうしたの?」

そんな空気を全く読まずに、トイレから戻ってきた白河が首をこてんと傾げて皆に問いかけた。かわいらしい白河に、信者の皆がほっとしてまるで助かったとでも言うようにためいきをつく。

「白河。俺、親衛隊やめたから。今までのこと、全部謝る。そんで、この人たち、俺にお前のそばにいてほしくないんだって。だから、次から部屋に連れてきても俺のことスルーでよろしく。ああ、ご飯ももう自分のしか用意しないから。俺に一切関わらないで。あ、もうやってやる義理もないしここの片付けよろしくな。」
「な…!」

堤の言葉に、白河がひどくショックを受けた顔をして、その大きな目にうるうると涙をためた。

「ど、して…、そんなひどいこと、いうの?お、俺たち、友達だよね…?」

そんな白河の姿に、今まで堤の豹変した態度に気圧されていた信者たちが狂った思考を取り戻す。

「て、てめえ、友美に向かってなんてこと言いやがる!」
「「冷たいやつ、最低〜!」」

口々に罵りだした信者たちに、堤はまるで興味がなさそうな顔をして顔を逸らしていた。

「あ、あなたは、友達に対してそんなひどいことをするような人だったんですね。幻滅しました。友美に謝りなさい!」
「は?」

信者たちの罵りを右から左へ流していた堤が、相田の言葉に反応を示した。眉間にしわを寄せ、嫌悪と怒りを露わにしたその顔に、相田はひどく驚いた。
それもそのはずだ。堤が、自分に対してこんな顔や態度を向けたことはない。初めて見るその顔に、相田はショックを隠せなかった。

「ひどいこと、って何?俺が自分のご飯しか作らないって言ったこと?あんたらが食い散らかしたこの残骸と食器の片付けを断ったこと?本気で言ってるなら救いようがないよね。元々それらは自分たちでしないといけないことなんじゃないの?なんで、俺がお前等にそこまでしなきゃなんないの?」
「それは、その、あなたは、親衛隊で…」
「ばかなの?いらないって、解散させろっていったのはそっちだよね?都合のいいように使いたいときだけ利用しようとするのってずるくない?白河こそ、自分の取り巻きの飯まで用意も片付けもさせるのって友達にすること?」

堤の言い分に、信者たちは今度こそ口をつぐむ。あまりの正論に、返す言葉がなくなってしまった。ばつが悪そうにそれぞれ顔を逸らす信者たちの中、相田だけは顔を青くしたまま堤から目をそらさない。堤は相田の視線を感じながらも、まるで顔も見たくないとでも言うように目を相田に向けなかった。

堤が、自分をみない。

その事実に、足の先からひやりと冷たい水でもかけられてしまったかのようだ。

「それに、あんたら矛盾しすぎ。いい加減うっとおしいよ。なあ、白河。この人たちさ、お前が好きなんだって。そんで、お前のそばにいつも俺がいるのが気にくわないんだって。」
「!て、てめえ!」
「それなのにさ、お前から離れようとしたらお前を邪険に扱ったって怒るんだよ。どっちなんだよ。どうしてほしいんだよ、その通りにしてやるから教えてくれよ、なあ?生徒会の皆様方に、その他取り巻きの皆様?」


白河にばれない様に隠していた事実を、堤に暴露され皆が皆気まずそうに顔を逸らす中、白河がおどおどとしながら口を開いた。

「お、おれも、皆が好きだよ。だって、友達…っ」
「お前、あざとすぎ。明らかな好意をぶつけられてよく友達だなんて言えるね。誰がどう見たって、ここにいる人たちお前の事恋愛感情で好きでしょ。気付かなかった、って言うんなら今気付きな。もういい加減めんどくさい。嫉妬で八つ当たりされんのも、文句言われんのも。俺はお前の事なんて何とも思ってないから。嫉妬しあって、取り合って喧嘩するならこいつを好きなあなたたちでどうぞ。俺を巻き込むな。」

じろり、と部屋にいる皆を人にらみしてひらひらと手を振りながら堤が自分の部屋に帰っていく。その後ろ姿を、その場にいる誰もが黙って見送るしかできなかった。

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