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2

初めは一人部屋にいた白河は、部屋の調整の関係で堤と同室になった。

白河は、同室になったその日に人なつこく堤のことを色々と聞いてきた。副会長の親衛隊だと話した時には怪訝な顔をしたが、恋人だと言うと一瞬無表情になりすぐににっこりと笑った。

『ぼ、僕、親衛隊ってあんまりって思うけど、恋人同士ならしかたないよね!』

しかたないってなんだろう、と思いつつ同じように笑顔を返した堤は、その後白河にどん底に落とされる。

副会長と恋人だ、と話した日から、堤と相田が一緒にいるとまるでタイミングをはかったかのように白河が現れるようになった。それは、部屋にいるときも同じで。さりげなく現れ、その時はさりげなく一緒にいるようになった。

例えば、『今日は会長たちと食べるんだ』と白河が言って出かけたから、堤の部屋で堤が相田と一緒に食べるために食事を用意し、相田が訪ねてきた瞬間に白河が帰ってくる。
聞けば、親衛隊に邪魔されて気まずくなって逃げ帰ってきたという。
『あ〜…、食べてないなら一緒に食べる?』
堤がそういうと、申しわけなさそうにしながらも席に着くのだ。それが相田の隣であることに不思議に思いながらも、そんなことがままあって、三人で食事をすることがあった。


会長たちに連れられて生徒会室に行く白河は必然的に相田とよく会う。
その間に仲良くなったのか、堤と三人でいても白河と相田が二人で仲良く話をすることが多くなった。


「彼は、私の光です。」

ある日、堤の前で相田がきっぱりとそう言った。堤はそれを聞いて、絶望した。見たことがないほど目を輝かせ、いかに白河が自分をわかってくれるかを堤に話す。

「私は、真実の愛を見つけました。彼が私の全てなんです。」

そう言って、相田は堤に別れを告げた。

堤は、泣いた。泣いて泣いて、泣きながらに、それでもまだ相田が好きな堤は、そんなに相田が大事なら、彼を守ろうと。大好きな相田の為に、全身全霊をかけて二人が幸せになるために努力しようと、親衛隊長を貫く事を決めた。

事実、堤はよくやった。親衛隊を抑え、仕事を投げ出した相田の代わりにできる仕事はやり、信者を引き連れてやってくる白河のために、その中に相田がいるからと皆の食事を用意したり。


白河のそばで幸せそうに笑う相田を見られるならば、と自分を殺して尽くしていた。



だが。



「てめえ、友美の同室だからって調子に乗るんじゃねえぞ。」
「「目障りだよね〜」」
「友ちゃんが優しいからってそれを利用して、そばにいて相田をこっそり見てるんじゃないの〜」
「振られたくせに…未練がましい…」
「白河をいじめてんのもてめえだろうが!恋人取られた腹いせしてんだろう、最低だな!」

ある日、いつものように部屋に現れた皆が白河がトイレに行ったすきに口々に堤を罵った。言われることに身に覚えがない。むしろさりげなく自分に近づいてくるのは白河なのに。まるで自分に見せつけるかのごとく、自分の目の前で相田と仲良くしているのに。

未練があるのは自覚している。だけど、あんなに大好きだったんだ。そんな簡単に吹っ切れるはずがない。そう思い、涙をこらえ唇をかみ、俯く。


「…いじめだなんて、なんて醜いんでしょうか。あなたには失望しました。親衛隊は、これをもって解散させてください。」
「…!」

相田が、堤を冷たい目で見ながらそう言った瞬間。



堤の中で、張りつめていた糸がぷつりと切れた。


「…恭平、…?」

初めに、堤を包む空気が変わったのに気づいたのは相田だった。先ほどと同じように黙り込んでいるだけと思ったその姿、今にも消えそうだった儚い空気が、何だか黒く重いものに変わった気がしたのだ。

「おい、何とか言えよ!」


―――バシッ!


俯く堤の顔を上げさせようと、生徒会長が堤の肩を掴んだ瞬間、堤は思い切りその手を払った。その行動に、その場にいた者皆が驚く。

「汚え手で触んじゃねえよ」

俯いた顔を上げた堤の口から発せられた言葉に、更に皆が驚いた。そんな面々を気にすることなく、堤がうっとおしそうに髪をかきあげためいきをつく。

「あーあ。やってらんねえ。もういいわ。了解。」

心底うっとおしそうにそう言う堤に、一番戸惑っているのは相田だった。

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