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5

養生のためしばらくご主人様がうちにおいてくれることになったコウガは、さすがというか野生の力でみるみるうちに回復していった。最後の診察が終わった後、うちに連れて帰り私とコウガにエサを差し出してご主人様が二人の頭を撫でる。

「なあ、リクト。知ってるか?こいつ、三毛のオスなんだぜ。すっげえレアな猫なの。100万ぐらいするんだぜ。」

ひゃくまん?

何のことか全くわからないけど、コウガが元気になったのはご主人様のおかげ。ご主人様、ありがとう。にゃあ、とひと鳴きして頭を撫でるご主人様の手にごろごろと頭を摺り寄せる。

「それでだな、リクト。お前はこの子が好きなんだろ?できれば俺もこいつを飼ってやりたい。こいつはレアな猫だから、このまま野良でいたらいつかきっと悪い奴らに捕まっちまうと思うんだ。…でもな。こいつは元々野良猫で自由気ままに生きてきたんだろ?そいつを、ここに縛り付けるようなことをしてはたしてそれが本当にこいつのためになるのか…」

眉を下げて、ご主人様がコウガをぐりぐりと撫でる。コウガも私と同じように、にゃあ、と一声鳴いてご主人に頭を摺り寄せた。

「…こんな話しても、お前らにわかるはずないよな。な、お前。窓を開けててやるからさ、お前が選びな。ここから出て自由になるもよし。このままうちの子になるもよし。俺、バイト行ってくっから。じゃあな。」

ご主人は窓を10センチほど開け、部屋を出て行った。二人で並んでご飯を食べた後、ぺろぺろと毛づくろいをする。私は自分の毛づくろいを終えた後、まだ毛づくろいをしているコウガにすり寄り背中や耳の毛づくろいを始めた。

「にゃは、リクト、くすぐったいよ〜」

なう、なうと甘えた声でなくコウガに返事もせず一心不乱に毛づくろいをする。

ご主人様の言っていることは、本当はほとんど理解できていた。コウガは自由な野良猫だ。外の世界がコウガの全て。ここにいるということは、その全てを捨てて今までの広い世界ではなくこのご主人様の部屋がコウガの全てになる。

自由なコウガを、不自由な家猫として縛り付けるのは間違っているのだろう。


でも…


「にゃ、あう…!」

毛づくろいをしていた私は、ふいに高雅のしっぽの根元に甘噛みしてやった。コウガはびくんと体を跳ねさせ、へにゃりと前足を崩れ落とさせる。

「にゃあ、リクト…、そこ、だめぇ」

私はコウガの制止を無視して根元を執拗にはぐはぐと甘噛みしてやった。コウガの鳴き声にどこか甘い色が混じり始め、私は一気に発情する。
甘噛みしていた尻尾の根元から徐々に上に登っていき、弱点である首の後ろに食らいつく。

「なぁう…!」

突然弱点に食いつかれたコウガは、一際甘い泣き声を出してその場にへなへなと崩れ落ちた。コウガの上に覆いかぶさり、ぐい、と腰を押し付ける。

「やあ、リクト…!なに…?やだよぅ、やだぁ…」

自由にならない体を必死に捩り、私にやめてくれと懇願する。

「コウガ。私はあなたが好きです。あなたと、一つになりたい。…私の傍に、ずっといてほしい…!」

コウガが、ぴくりと動きを止める。私はコウガにのしかかったまま、コウガに私の気持ちを素直に告白した。

「…でも、あなたは野良猫です。私のわがままで、あなたを縛り付けることなんてできない…!…っ、それでも、私は、私はっ…!あなたが欲しくて欲しくて、仕方がないんだ…!」

組み敷いたまま動かずに食いついているコウガの首元を離し顔を摺り寄せる。

コウガ、コウガ。あなたは自由な野良猫だ。私とは違う。私が外の世界で生きてはいけない様に、あなたもきっと家の世界では生きてはいけないだろう。でも、私の知らないところで自由に生きるあなたを想像するだけで私の胸は張り裂けんばかりに痛み、苦しくて苦しくてたまらなくなる…!

「…いいよ」

ぽつりと聞こえた小さな声に、耳をピクリと反応させる。

「リクトのそばにいる。俺、リクトのこと好きだもん。リクトと初めて会った時からね、俺、リクトに会いたくて仕方なかったんだあ。リクトが来るの、ずっとずっと待ってたんだよ?リクトのいない外の世界は、ちっとも面白くなんてなかった。外なんかより、ずっとずっとリクトといたいよ。だから、ずっとずっとここにいるよ。一人で外で遊んでるより、大好きなリクトの傍にいる方が、俺楽しいもん。」

にゃは、と笑うコウガに、ますます発情が強くなった。一度離した首元に、もう一度食らいつく。

「ふにゃあ…!」
「…私も、あなたがいない部屋など退屈で仕方がなかった。あなたが私の世界の全てです。…愛してますよ、コウガ。あなたの全部を私にください…!」

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